50.《ネタバレ》 ジメジメと蒸し暑くて重苦しい設定が、白黒のコントラストと画面構成でいやというほど表現されていて、それが引き込まれる魅力になってしまう映画。 感覚的に、登場人物全員「野良犬」という言葉がぴったりだ、と思わせる描写はさすがである。 刑事物としては、それほど練りこまれた脚本ではないのだが、場面展開、画面の作り方、見せ方、役者の個性で、映画を見た!っていう満足感はしっかり味わえる。この後に出てくる世界に名を馳せる名作の、クロサワエッセンスが、まだ研ぎ澄まされないままでこってり入ってる感じ。 同じクロサワ刑事物でも「天国と地獄」の方がエンタテインメント性では絶対にお勧めではあるが、映画としてのテーマ性、芸術性と戦後3-4年しか経っていない日本の雰囲気がよくわかるという歴史的価値でトータルでは負けていないかもしれない。 【nobo7】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-07-01 01:49:25) |
49.《ネタバレ》 とても印象的なシーンが多い作品である。戦後まもない東京。真夏である。冒頭の街の喧騒。闇市。警察署内の整頓された書類室。繁華街の片隅の寂れた様子。ダンスショーの楽屋。安ホテルの電話ボックス。郊外の田園風景。 真夏の暑さに茹だり、汗にまみれ、砂埃りが舞う。空気はジメジメとし、太陽はギラギラと照る。今とは違うであろう都会の匂い。そんなすえた匂いが画面から漂う。そして、雷雨である。雨に濡れ、その匂いを感じる。 僕が好きなのは、刑事役の志村喬と三船敏郎が仕事帰りに志村の自宅でビールを飲むシーンである。郊外の一軒家。開け放たれた縁側から夏の夜風が涼やかに吹き込む。そこで交わされる会話。最近の若い者は、、、アプレゲール!云々。戦後派の三船と戦前派の志村。でも志村の子供はまだ幼い。勤続20数年だから、まだ40代か。思いのほか、志村喬は若かったのか。。。 プロ野球の観戦シーン(巨人vs南海)は結構貴重なんだろうなと思う。ジャイアンツの青田、藤本、そして川上が打つ。選手たちの一挙手一投足に超満員の観客がわく。彼らはそれぞれに立ち上がり、喝采し、座る。鳴り物なんてない素朴な応援風景。テレビがない時代だから、観客は選手のプレイにとても素直に感動しているように見える。選手たちも自由気ままでとても楽しそう。 そして、最後のシーン。犯人役の木村功を追い詰める三船敏郎。緑の中を駆け回る。白黒の画面に、色のない映像に、目くるめく極彩色の光景が浮かび上がるよう。平穏なピアノ音の中で、静寂の中で、犯人の慟哭。 戦後という時代。復員者たちは、南方や北方の異国で戦争を戦い、多くの戦死者、餓死者を間近にし、幾多の犠牲の中で帰国する。また国内でも多くの人々が空襲の下で辛苦を味わい、銃後の混乱の中で、国民全体が敗戦を受入れた。そういう時代からたった4年後の物語である。そこにある物語は常に戦後の日本という時代を背景にせざるを得ない。そして、それは現在の僕らに響く。僕らは今でも戦後を出発点として連続した時代を生きているから。その原風景がこの映画に描かれており、だからこそそれが僕らに響くのである。 まだ「戦後」と呼ばれた時代風景の中で、その風景そのものが物語を綴っているような、それが現代の出発点だからこそ、僕らに響いてくる。その時代の貴重な空気、色、光と影、音や匂いが、ある種の思想として、そこにはあるのだ。 【onomichi】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-05-13 00:33:46) |
48.《ネタバレ》 ジメジメとした都会の暑さ、汚さが画面から伝わってくる。 正義感に溢れた新米刑事とベテラン刑事に三船・志村が見事にハマっている。 特に志村喬はモーガン・フリーマンに見えて来ました(笑)。 犯人役は何気に七人の侍のあの優男、岡本勝四郎の役者さんだったんですね。 悲痛な叫び、素晴らしい演技でした。 後半にかけて熱を帯びていく展開も良いです。 【おーる】さん [DVD(字幕)] 7点(2010-02-06 18:13:10) |
47.《ネタバレ》 この時期の黒澤の現代を舞台にした映画って、どれもギラギラギラギラしてますよね。本来人間が持っていたはずの、いまにも暴発しそうな「生」のエネルギー。タイトル「野良犬」の息使いにも似た獰猛な危険さ。戦後復興時の街の情景とも相まって、なにやら画面からもやもやと、エネルギーの飛沫が立ち昇ってくるようなイメージ。クライマックス犯人逮捕シーンでの草むらでの俯瞰慟哭シーンと、どこぞのお屋敷から流れてくる穏やかなピアノの音色との対比が忘れ難い鮮烈な印象を残します。今のニッポン人は、この爆発寸前のエネルギーを昭和のいつかどこかに置き忘れてしまったんでしょうか? 【放浪紳士チャーリー】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2009-11-30 15:05:45) |
46.《ネタバレ》 自分の生まれるはるか昔に、現代劇の原型となる映画が製作されていた点に尽きます。 踊り子のシーンをみると、現代日本女性のスタイルが、短時間の間によくなっていることがわかります。意思が、遺伝子の働きを制御している事実を、明らかに証明しているようです。それに比べて、男性は、若き日の三船敏郎を超えているかというと、そうはいえないところにも、本作品を鑑賞する価値がありそうです。 【クゥイック】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-08-12 21:43:11) |
45.《ネタバレ》 うだるような暑さが画面からにじみ出てくる様です。ベテラン刑事がいい味出してますね。 【ないとれいん】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2009-03-17 19:35:15) |
44.《ネタバレ》 「天国と地獄」を見てからだと印象が薄い気もしましたが、若き三船敏郎が真夏の暑さの中ひたすら聞き込み調査するシーンはピチピチな新人だった当時の彼の魅力を存分に引き出していると思う。いきなり拳銃を盗まれたって所から始まる所もなかなかだし、ストーカーの如く女を追跡するシーンもコミカルで楽しい。ベテラン刑事役の志村喬も後半から登場しますがアイスキャンディを舐めながら取り調べするシーンは笑えます、この当時からカツ丼の元ネタのものがあったのね。刑事ドラマの元祖を見ている感じで見れるし、今と戦後の暮らしも垣間見れる所も魅力の一つだと思った。しかし、こんな現代劇をこの時代にすでに作っていたとはやっぱり黒澤監督は改めて凄い人です。 【taka-104】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2009-02-22 04:03:09) |
43.おもしれ~!と思わずうならされる刑事サスペンス。イタリアでは「自転車泥棒」が出没している頃、日本ではピストル泥棒が発生。暑い暑い最中、暑苦しい顔の刑事(ミフネ)が拳銃を盗まれてしまう。町中を彷徨う刑事(もちろん彼は他人の拳銃に手を出したりはしない、よね?)、その執念が前半描かれるのだけど、手がかりを持っているらしい女性を追い続ける場面の、セリフの無いパントマイム劇が見どころ。このシーンの音楽もなかなか絶妙。この映画、既成音楽の引用も多い(シーンと対比される明るい音楽がしばしば用いられる)のだけど、やっぱり早坂文雄のオリジナルスコアが、見事であります。さて映画後半は、ベテラン刑事(シムラのおっちゃん。結構若い)との捜査が描かれます。拳銃が悪用されるたびに大げさに悩むミフネ刑事の深刻ぶり加減が、良くも悪くもクロサワ映画だのう、と思っちゃうところなのだけど、そういう“舞台的”“戯画的”な部分が、この映画では特に、数多い登場人物の存在感をそれぞれ際立たせ、「うまい脚本だなあ」と思わせられるところです(脚本のウェイトの高さが、黒沢映画の批判を受ける部分かもしれませんが)。野球場のシーン、あるいは安ホテルのシーンでの、無類のサスペンス感覚。クライマックスの対決シーンも忘れられない。子供たちの歌声を背景にした、犯人の呻きは、時代そのものの呻きでもあります。戦後まもないこんな時代によくこれだけの作品を作った、と同時に、この時代でなければ生まれなかった作品、なのかもしれません。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2008-12-09 17:20:59) |
42.皆言ってますが、志村さんも三船も若いっ。黒澤映画と言えど、映像や時代背景以外に現代見て楽しめるところのほとんどない地味な作品です。志村喬は、どんな役でも存在感があって好きですが、サムライじゃない(今回はダメ警官ですが)三船はイマイチ魅力を感じないのは僕だけでしょうか。そして相変わらずセリフがききとりずらいため、字幕ありで鑑賞。 【すべから】さん [DVD(字幕)] 5点(2008-07-07 14:56:47) |
41.《ネタバレ》 ナレーションで始まる序盤は古くさかったが、その後の展開がサスペンスフルですごくおもしろかった。ピストル屋を探す三船敏郎のギラギラした視線にしびれた。ホテルの電話のシーンに釘付けになった。「泥だらけのズボン」の緊張感にやられた。あと、全編を通してみられる戦後復興の様子。ちょっと歴史が観られる。ラストの犯人の叫びもいい締めになっている。彼は日本映画初のサイコ・野郎かもしれない。しかし、公開から現在まで、還暦の人間分の時間があるとは。 【ジェイムズ・ギャッツ】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-06-24 19:17:46) |
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40.なかなか完成度の高い作品です..しかしながらストーリー展開など、今観ると..申し訳ないが、ごく普通.. それにしても、三船敏郎..若い... 【コナンが一番】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-05-22 17:19:49) |
39.本格刑事ドラマだー。最近こういうのないなー。 【Yoshi】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-03-20 18:55:55) |
38.《ネタバレ》 目が離せないストーリーと素晴らしいカメラワークだった。黒澤監督はやはり偉大だ!汚れたズボンの犯人を探す場面は後日の映画「リオブラボー」にも見られたので嬉しかった 【ホットチョコレート】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2008-03-11 19:03:22) |
37.ギラギラとした灼熱の太陽の下、登場人物みんなが汗を拭う。画面から真夏の暑さが伝わってきます。聞き込み捜査を地道に続け、犯人を追うというシンプルな展開だけど、心に残るセリフが随所にちりばめられていて、当時の町並みも興味深い。正直、今観ると古臭さを感じるけど、1949年にこんな映画が存在していたというのは凄いことですよね。 【たけたん】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-03-11 05:17:50) |
36.《ネタバレ》 ○午前十時の映画祭にて再鑑賞。○終戦から数年後の時代を映している映像的貴重さとともに、この時代の邦画にして刑事ものの礎を築いていたのは本当に驚かされる。○「悪」とは何か。村上刑事が佐藤刑事と議論した後の子供たちの眠るシーンや、同じ財産をすられた者同士である村上刑事と遊佐が横たわるシーンの俯瞰カットなど表現者として素晴らしい領域に達している。○黒澤映画では毎度のことだが、セリフが聞き取りづらいのが残念でならないなぁ。 【TOSHI】さん [映画館(邦画)] 8点(2008-02-01 09:40:55) |
35.《ネタバレ》 期待して見たのですが・・・う~ん、一言で言えば「微妙」という感じです。 全体として間延びしすぎている感じを受けました。最初の食い詰めたような格好をして三船が歩き回るところとか、飽きるほどに長い。あと音声が聞き取りづらい。本当にただ淡々と話が進んで行くようで、それといったひねりもなく、あまりハラハラは出来なかった。これは三船があまりにも「いい人」っぽさを出しすぎて引いてしまっているからかもしれませんが。 撃たれてからはいいのですが、その後はもうほんのちょっとだから、全体の単調さを打ち消すほどのインパクトはなかった。 ああ、あと三船がすごく若いです。まるで別人です。 【θ】さん [DVD(邦画)] 5点(2007-08-22 22:38:53) |
34.皆さんが書かれている通りで今更付け加えることは少ないのですが、とにかく刑事ドラマ(映画)の最高峰であることは間違いありません。刑事モノの全ては直接・間接的にこの映画に影響を受けていると思います。全てが最高ですが、一番印象的なシーンは志村喬の登場シーン、アイスキャンデーと取調室のところでしょうか。よく言う「人間が描けている」という点でこの取調室のシーンは非常に勉強になります。 【Sean】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-07-24 13:36:41) |
33.三船敏郎はなんと美しい俳優なのでしょうか。現在活躍している日本男優の誰も持ち合わせていない圧倒的なオーラがあると思います。 【ジャッカルの目】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2006-12-29 15:47:32) |
32.《ネタバレ》 「羅生門」以前の黒澤監督の作品は基本的にワンカットが長く説明が丁寧ですね。観ていて「果たしていつになったら核心に迫るんだろう?」とか思い、少し中だるみを感じてしまいました。志村喬演じる刑事が犯人に撃たれたあたりからはさすがに緊張感が増し、駅のシーンで向かい合った犯人と三船先生演じる村上刑事の2人が目の合うシーン等の雰囲気は最高ですが、いかんせんそれまでが長い・・・。同じく犯人を追う「天国と地獄」の終盤の張り込みのシーン程の緊張感が保てなかったのは、変に多くの周りのキャラの描写を細かくしすぎたからなのかなと思いました(その割りに犯人の描写は薄い)。若い熱血刑事と、ベテラン刑事の組み合わせというと「踊る大捜査線」「セブン」と重なる方も多いみたいですが、私も志村喬が時折モーガン・フリーマンに見えてしまいました(笑) |
31.《ネタバレ》 私にとっての黒澤映画は大きな壁です。「世界のクロサワ」をどうしても楽しめません。どうも大仰で登場人物がみんな今にも頭の血管切れそうな演技してるって印象が強くて。さりげないシーン、力を抜いてるようなシーンですら、その実、めっちゃ力入れてさりげないフリしてない?みたいに思っちゃって。で、苦手克服とばかりに見ましたが、「セブン」みたいな映画でした。ってこっちがずっと先だし。志村喬が撃たれるシーンでの緊迫感が凄いけど、「胸騒ぎがする」ってセリフが伏線ってアリなんだろうか?みたいに思ったり(『スター・ウォーズ』に毎度出てくるお馴染みセリフ「イヤな予感がする」はコレが元ネタかぁ?)。冒頭のナレーションは映像で十分語れているのに一体なんのために入ってるんだか意味不明だとか。ハルミのお母さんが窓に投げたドレスの位置がいつの間にか外側になってるとか。いやいや、映画は楽しみましたけど。終戦直後の日本の風景、風俗が捉えられていて興味深く、混乱する社会に生じた屈折を当時リアルタイムに作品に叩き付けている点が凄いですし、犯人に迫ってゆく流れに無駄がないので(野球の試合のシーンとかはともかく)退屈する隙なんてありませんし。激しいシーンでのカット割りが細かく、ダイナミックで全く古さを感じさせませんし。だけど、ミフネの力入りまくりな暑苦しさに、こちらも暑苦しくなってしまって、苦手克服にはまだ時間がかかりそうだな、って。 【あにやん🌈】さん [DVD(邦画)] 7点(2006-07-29 01:24:37) |