22.《ネタバレ》 シベリアを生き抜き、不倫駆け落ちで妻を捨てた父の悔恨と諦念のこもった「スカみたいにしか生きられヘン」「スカみたいに死んでいく」台詞。しかし、今を懸命に過ごす姿から滲み出る人情は「スカ」ではなく「値打物」で、息子や束の間触れ合った姉弟の財産になったと確信します。別れのシーンに、色んな負の事情を背負いながらも生き抜いて欲しいと思わされました。田村高廣絶品の秀作 |
21.戦争の傷跡を残している時代を背景に、人と人との結びつきを描いた人情ドラマだが、 家族の絆や子供同士の友情をさりげなく描いた内容が、静かな感動を与えてくれる。 原作をまとめあげた監督さんの手腕は賞讃に値するが、惜しむらくは画面が異様に暗いこと。 ベタに塗り潰されたようなシーンや役者さんの表情がよくわからないのは残念だった。 父親役の田村高廣の好演が光る逸品。 【MAHITO】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2012-04-30 05:49:42) |
20.戦後10年後の大阪、復興の影に隠れた貧しさを取り巻く人間模様。何気に見出したらじっくり観入ってしまった。姉弟がせつない。何度も観ないだろうけど印象は強い。役者も子役含めて皆いい。 【movie海馬】さん [地上波(邦画)] 8点(2012-04-15 03:20:12) |
19.2012.02/06 鑑賞。赤胴鈴乃助の主題歌、栃若戦実況中継、など私の時代のリアルタイム。 私の生活はもうちょっと良かったかなあ? 当時の写真に伯母さんからのプレゼントの野球ユニフォーム姿と破れた運動靴を履いて嬉しそうなバット姿がある。そのほか貧しい割りに楽しい出来事がたくさん思い出される。 【ご自由さん】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-02-29 17:20:22) |
18.《ネタバレ》 あまりにも素晴らしい作品だったので宮本輝さんの原作本も後から読みましたが、じつに原作に忠実なんですね。カニ燃やすシーンもあのまんま(苦笑)当時の貧しさの中にも明るく生きるそれぞれの姿がとても印象的。特に田村高廣さんが素晴らしかった。子役の子も皆好演で、お姉ちゃんが米びつに手を入れて温かいというセリフは衝撃的に感じました。 あとは何と言ってもラスト。「きっちゃん!きっちゃん!」と叫び、去っていく廓船を走り追いかけたシーンは忘れがたいシーンです。監督さんとの愛情出演で撮影僅か6時間にも関わらずその美貌で視線を釘付けにした加賀まり子さんもとても良かった。何度も観返したいような作品ではないけど、観始めたら最後まで一気に観たくなるような不思議な魅力に包まれた作品だと思います。 |
17.《ネタバレ》 前半のところ、姉弟が主人公宅に招かれるシーンが凄い。ごくありふれたやりとりの中に、5人のそれぞれの立場からの内心が複雑に絡み合って、奇跡のような均衡を見せつけている。何かが壊れそうで壊れない、その辺のミステリーやサスペンスよりも圧倒的にスリリングな20分間。●その画面を引き締めているのは、実はあのお姉さんだと思う。出会いでも中盤でもラストでも、彼女が登場するたびに、確かなドラマの動きを感じさせる。それに刺激されたのか、田村高廣の演技も絶好調。●それと、ほとんどのシーンは橋とその両袂という狭い範囲で起こっているのに、その限定を縦横無尽に使い切っているカメラの切れ味が凄い。うどん屋の建物の中のレイアウトなんかも、周到に計算されているなあと嘆息。 【Olias】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-09-24 04:33:03) |
16.お父さんの演技がよかった。親子のやり取りをみて、心が温まるいい映画だった。 【ホットチョコレート】さん [地上波(邦画)] 8点(2011-09-21 21:08:24) |
15.原作者にとっても監督にとっても1950年代は少年時代に当たるが、懐古ではなく貧困の悲しみを描いている。そして少年が好むと好まざるとにかかわらず世の中の影の一部分を知り、成長していくという事だろうか。何ともいえない余韻を残す…。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-09-20 20:30:17) |
14.《ネタバレ》 姉弟が信雄の家に遊びに来た時、信雄の母と一緒にお風呂に入る姉のはしゃぐ声に弟がこぼしたひとこと「お姉ちゃんが笑っとる・・・」。幸薄い姉弟に訪れた束の間の幸福。見てはいけない姉弟の母の一面を見てしまった哀しみ、そしてラストの別れ・・・いつまでも余韻の残る名作。 【きーとん】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2010-07-19 18:54:03) |
13.《ネタバレ》 レーザーディスクにて図書館で鑑賞。 LDってのは、あの重さ、あのデカさがとにかく個性的で、リッチな印象がある。 さて、本作について。 1980年代の邦画最強の1本ということで、かなり期待して観たが、残念ながらその期待を上回ることはなかった。 子供が主演で、実にうまい子役だとは思うが、子役に頼り過ぎ。 俳優や女優の深みのある演技や、若手俳優や女優のフレッシュ感とかが映画の良し悪しを左右すると思っているだけに、これだけ子役に出ずっぱりをやられちゃうと、感心はするが、どうも映画としてはいまいち楽しめない。 ただし、蟹をマッチで焼く子供ならではの残酷さ、子供が売春行為を目の当たりにしてしまうことの背徳感は、モノクロの泥臭い映像と相まって、心に強く突き刺さった。 小栗康平がこの1本目で賞を総なめにして監督デビューするが、この作品で過大に評価されてしまったのではないか。 その後の作品も『死の棘』を除いて良いと感じた作品もなく、ここまで賞を与えてしまった功罪というものを考えずにはいられない。 【にじばぶ】さん [レーザーディスク(邦画)] 5点(2009-09-06 17:10:45) |
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12.《ネタバレ》 子供の世界と大人の世界は子供からしてみれば断絶しているんですよね(大人が2つの世界の間に関所を作っているのかもしれませんが)。主人公の少年は、その関所をふとしたことで通り抜けてしまったがために、友人との別れを迎えることになってしまうのですが、そこらへんの描き方が上手いなと感じました。 80年代という軽薄短小な時代に、昭和31年という時代を、その当時の作風で撮る発想も良いですね。今の時代劇化した昭和ノスタルジー映画(個人的には好きですが)とは違うリアリティが感じられました。 明るいけれど、どこか虚無感を漂わせている田村高廣の演技が非常に素晴らしいですね。 【TM】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2007-04-10 18:36:48) |
11.《ネタバレ》 かなり思い入れが強く点数も10点です。燃えながら落ちていく蟹をじっと見つめる少年の目、すべて受け入れてなお哀しい母、思い出しただけでちょっと涙目になってしまいます・・・。 |
10.望んだわけでもないのに苛酷な家庭状況の中で生きていくしかない少年と,まるでちゃぶ台のようにこぢんまりとした,しかし暖かな家庭で育った少年。束の間の出会いが2人の影を交差させ,やがて別れが訪れる。幼くつたない彼らには,友情という大人の言葉はさして意味を持たないかもしれない。それでもあの別れの日,「きっちゃん!きっちゃん!」と叫びながら,去っていく廓船をどこまでも追ったあの日の記憶を信雄は忘れることはないだろう。それらはいずれ色あせていくが,決して消えることはない。それにしても痛切な別離を知るには,彼はあまりにも子供だった。そんな彼のために観客である私にできることといえば,彼とともに涙を流すことだけである。 【Roxy】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2005-11-02 07:45:33) |
9.だんだん薄らいでいく昭和の匂いが、この映画の中ではぷんぷんしている。3人の子供たちの名演技。大人たちの演技も、まるでそのものの人生を歩んできたかのようだ。ある友情が、ひとりの少年を大人にしていった。 【mhiro】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-07-07 09:32:09) |
8.主人公の子供達と同年代のオジサンです。映画と思い出を重ね合わせながら、心の奥の宝物をとり戻した感じ。当時の暮らしが懐かしく蘇り、胸を熱くしました。こうした特別な事情のある家庭は多かった。そしてそれを温かく見守り蔭で支えてくれる親切な人が確かに存在した…。 うちの近所の同級生の家族も、みんな貧しかったけど、とても優しく親切にしてくださった。小さな出来事でも、みんなで共有し喜ぶことができた。映画は昭和31年の風景を、昭和56年の時点で見事に描いているのにも感心。加賀まり子は、はっとするほど妖艶だった。 【ちくわ】さん [地上波(字幕)] 9点(2005-06-28 14:54:02) |
7.原作が好きなのでちょっと点数低めです。映画なので仕方ないのでしょうが、所々大袈裟というかくどいな…と感じるところがありました。音楽のせいかもしれませんが。あとモノクロにしてしまったのも文芸作品と意識しているようで鼻についてしまった…。でも人にすすめられる良い作品なのは間違いないと思います。 【へっぽこ】さん 7点(2004-12-15 02:34:42) |
6.宮本文学全般に漂う「死生観」を上手く掬い取って視覚化した名作です。当時加賀まりこばかりが絶賛された記憶が有るが、他の出演者の方、特に田村高廣がふとした拍子にみせる、人生の残酷な部分を知ってしまった男の疲れた表情は素晴らしいと思う。藤田弓子のお母さんが子供たちに注ぐ眼差しの暖かさも良し!別れのシーンも含め忘れ難い箇所は幾つもあるが舟べりで子供達が蟹を焼き殺す場面は秀逸。 【放浪紳士チャーリー】さん [地上波(邦画)] 10点(2004-08-29 10:41:37) |
5.昭和31年の大阪。戦後10年以上たっても戦争の記憶はまだ生々しく暮らしも貧しい。 学校にも通えず廓船で暮らす姉弟の悲しさは胸に迫るし、うどん屋のノブちゃんとの友情、のぶちゃんの父母のやさしさなどしみじみとした情感を感じる。 愛情に恵まれ貧しいながら幸せだったノブちゃん以外は皆それぞれ胸の奥に悲しみを持っている。そのノブちゃんにもいろんな出来事が起こって小さな悲しみを知ることになるが、作品にはそんなみんなを包み込むような暖かさがある。 自転車の車軸回しの遊びや着ている服、赤銅鈴ノ介のラジオ番組、出回り始めたばかりのテレビの相撲などなど、そこかしこに当時の様子が描かれていてノスタルジック。これがまたモノクロゆえに一層効果的。 子供たち(特にきっちゃんの面構えがいい)はじめ田村、藤田の夫婦などの出演者もとてもよかった。 【キリコ】さん 8点(2004-08-18 21:14:41) |
4.経済白書に「もはや戦後ではない」と記された昭和31年、しかし子供達の視界の其処彼処に、そして大人達の心の中には確かに戦後があった。いや、そこはまだ終戦さえ迎えていなかったのかもしれない…。個人的に一番のシーンは、喜一がおもむろに「戦友」を歌い出したシーン。ここには思わず笑ってしまったのと同時に、何とも言えない悲しさを感じた。また、藤田弓子が凄い女優だった(過去形でいいのかな?)のにも驚いた。全体としては良作だと思いますが、ノスタルジーを前面に、そしてくどい位に押し出してしまったラストが作品の魅力を減耗してしまったと思う、6点献上。 【sayzin】さん 6点(2004-08-16 13:33:21) |
3.すごく丁寧に作られた作品だなーって感じでした。俳優さんの演技も良かったあ。田村高廣演じるお父さんはいかにも「古き良き、日本のお父さん」で、寡黙な中に滲み出る優しさが魅力的。藤田弓子のお母さんもいかにも「母は強し」な包容力を感じさせて素敵。あと子役の三人、特にきっちゃんが素晴らしい。どうやって演技指導したんだろう?作品の内容も戦後の荒廃から立ち直りつつある中で尚も人々の中に残る戦争の傷跡を瑞々しく描いていてしみじみしました。ただ・・・きっととても水準の高い作品だからこそワガママを言いたくなってしまうのだろうと思うのだけど、もうちょっとラストを盛り上げて欲しかったような気もしました。あるいは逆にばっさり描写を省略してしまうとか、ね。 【ぐるぐる】さん 7点(2004-07-27 17:40:38) |