1.《ネタバレ》 流れていくレールと、光に満ちた車窓の風景。オープニングから照明に対する意識が非常に高い。
陽の当たる窓際に立つ小松菜奈。さらにホームでは自然の順光が、デートの際にはアンティークのランプやイルミネーションの光が、
映画スクリーンや水面の反射の照り返しが、多種多様な光でもってひたすら彼女を賛美するように輝かせる。
あるいはホームに入ってくる電車のライトが彼女を徐々に照らし出していく。美術教室の外光が彼女をまるで異世界のように包む。
それら映画の要でもある光の操りは、ドラマの主題にもかなったものだ。
時間を視覚化する針時計、砂時計、メリーゴーラウンド、交差する複線のレールや月光と、モチーフの映画的活用も巧い。
理屈は荒唐無稽だが、黒板に描かれた円環の図一発で納得させる強引さを買う。
後半の劇伴の過剰さ、エピローグの蛇足感が少々玉に瑕だが、主演二人の清潔感と彼らを魅力的に撮りあげたスタッフの技が
伝わるのがなによりだ。