8.まず本作レビューの前に原作である
湊かなえ著「告白」について少し書きたいと思います。
というのもこの原作本はどことなく不完全で、
悪く言ってしまうとどこか素人臭い文章のような気がしてならなかったからです。
そしてその不完全さこそが原作本の大きな魅力だと思います。
つまりは本作に書かれてあること全てを読み込んで信じるだけでは不完全のまま
モノローグ形式で書かれる本作の「真実」と「嘘」を自分で解読しながら読んでいくというのが
原作「告白」の楽しみ方だと個人的には考えます。
本作の監督である中島哲也も
脚本執筆に辺りまず始めに手がけた事も原作の虚実の選別だったそうです。
映画は小説と違い人の表情が垣間見えるモノなのでこの選別はある意味必然の作業だったともいえます。
次にこの原作本を出演者の生徒全員に読ませ、一人一人と面談
リアルな13歳の感想を聞き、作中に反映させたそうです。
そこで分かった事は本作を読んだ13歳の生徒の多くは
本作の内容を一点の曇りも無く「真実」と判断。
それは原作で描かれた13歳とは余りにもかけはなれた純粋な13歳でした。
マスコミは煽ります「少年犯罪の凶悪化」
はたしてそうでしょうか?
管賀 江留郎著「戦前の少年犯罪」を読めば明らかなのですが
過去の少年犯罪の方が遥かに残酷
現代の子供達はむしろどんどん安全になっている。
最近の子どもを怪物扱いする事の浅はかさに気付かされます。
正に私の思う湊かなえ著「告白」の最大の問題点はここで
現代の少年少女達をさも怪物のように見立てまるで現代の社会問題のようにしているところにあると思います。
例えば本作の一文に
『親殺しは近年ニュースで取り上げても「ああ、またか」と思う程度』
という文がありますが国の統計では少年による凶悪犯罪は1958~1966年までがピークでその後は急激に減少しているのです。
なので私は本作を楽しむ際、
現代を生きる13歳をキチ○イのように描く事こそ「嘘」つまり「ファンタジー」
だと解釈して楽しむ必要があると考えます。
だからこそ本作の映画化に日本が誇るファンタジー系映画監督
中島哲也が手を挙げた事は、大変幸運な事だったといえるでしょう。