4.《ネタバレ》 パリの町中、歌を披露するヒロインとの出会いは視線劇から始まる。主人公の作った輪の内と外で今度は彼女とのパントマイムが始まる。
突然に雨が降り出し、彼は彼女を大きなパラソルの輪の内側へと招き入れる。2人が心を通わしていく流れがテンポよく進んで心地いい。
軽快な大道芸の動きの楽しさ。米語と仏語が交じり合う、言葉の響きの楽しさ。ふと挿入されるサイレントの趣向。
こうなると、ルネ・クレールを連想せずにはいられない。
高層階を一気に上っていき街を一望するカメラも、「自由の女神像」の上での語りも、
緊張のクライマックスに静かに『エリーゼのために』を奏でるセンスも、そこに通じるような感覚がある。
夜明けに向かい、うっすらと明るくなっていく地平線。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットが歩みだす直前、雲が切れて景観が広がる瞬間には、張られたワイヤーの直線が生む
造形美とともに、映画の美がある。
エレベーターの運転員をはじめ、ビルを建造した作業者たちが連行される彼を拍手で讃える。
このようなシーンがあるゆえに、ラストに映し出される二棟のビルのロングショットの感動が増す。