64.《ネタバレ》 2009年の映画を全部見たわけではないが、これよりは第9地区のほうが上だと思ってはしまうが、
それでも第二位にはこの作品は来るだろう。
また、第9地区が低予算(今見たらMOONの6倍)とはいえ、CGバリバリだったのに対して、これのCGはオープニングのテロップ表示など
ごくごく小さな部分に抑えられている。
つまり超超低予算の本格SFというわけだ。
SFはリアリティを出すために金をかけねばならんが、これは月の密室であるという舞台、
また月を走る車をラジコンにする(これはこれで重力の軽い月ではリアリティがある)など工夫が見られる。
何より、登場人物が少ない。
メインは主人公、あとロボット、その他いくつかのナレーションの声や家族の声、これのみである。
最初のプロモーションビデオや家族のビデオを除いて主人公以外に動いてるキャラはいない。
いや、人物の人数と面白さは関係ないのは当然で、最低二人いればいい、いや一人でもいいはず。
この作品はロボットと「主人公」の「二人」だけしか出てこない。
その中でこれだけの話が作れるのである。
なんだかネタバレなしレビューっぽくなるが、
状況としては月にあるヘリウム3の採掘に成功した会社が、
人を一人送り込んでヘリウム3を採掘させる、退屈させない、不自由させないためにロボットを置く、というもの。
SFファンにとってヘリウム3はメタンハイドレート以上に夢の気体であることはわかるはず。
簡単にいえばヘリウム3かメタンが自由に取り出せれば石油社会は終了するってことです。
そんな重大ながらも孤独な仕事に疲れている彼はある日休憩所から採掘所まで行く間に事故を起こし怪我をし、、、
という話。ここからネタバレ。
要するに彼はコピー、「主人公」が死ねば次の同じ人間が同じ記憶でまたはじめる繰り返しを
主人公のオリジナルの人間が会社と契約を交わした。
この映画の「主人公」が何代目かはわからないが、少なくとも彼のコピーは何十体も仕舞われていたし、
ビデオでは3歳くらいに見える娘は少なくとも成人はしているだろう。
20年として「主人公」一体の契約が最大3年として7代目ソウルブラザーズ以上であることは間違いない。
というところが途中経過。
そこから怪我をした「主人公」と「次の主人公」二人のバディものになっていく。
さらにはいかにもそんなことをしたらこちらを攻撃してきそうなロボットはロボット三原則に忠実なのかこちらの良き理解者になるのもものすごくいい。
話は最後、ニュースのナレーションだけで終わるが、それだけで何が起きたかわかるし、
オリジナルが今何歳でどういう状況かとか、「主人公」が地球でどんな扱われ方をされるか、とか
そんな内容ははっきりいってヤボすぎるだろってもんで、書いててめちゃめちゃ傑作だよこれと思ったが
それでも第9地区と比べると第9地区のほうが上であちらが9点か10点なのでこれは8点。
9点あげてもいい8点と思ってください。
あと日本語タイトルは「月に囚われた男」、原題は「MOON」。
英語を少したしなんでるんでMOONも悪くはないですが、いかにもやぼったい古き良きSF的タイトルのこれは好きです。