この世界の片隅に(2016)のシネマレビュー、評価、クチコミ、感想です。3ページ目

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この世界の片隅に(2016)

[コノセカイノカタスミニ]
In This Corner of the World
2016年上映時間:129分
平均点:8.20 / 10(Review 151人) (点数分布表示)
公開開始日(2016-11-12)
公開終了日(2017-09-15)
ドラマコメディ戦争ものアニメ漫画の映画化
新規登録(2016-10-20)【ユーカラ】さん
タイトル情報更新(2024-01-27)【Cinecdocke】さん
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監督片渕須直
演出新谷真弓(広島弁監修)
のん北條すず
細谷佳正北條周作
小野大輔水原哲
潘めぐみ浦野すみ
牛山茂北條円太郎
新谷真弓北條サン
小山剛志浦野十郎
京田尚子森田イト
佐々木望小林の伯父
塩田朋子小林の伯母
三宅健太ばけもん
喜安浩平
原作こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)(双葉社 週刊漫画アクション 2007年‐2009年連載)
脚本片渕須直
音楽コトリンゴ
佐々木史朗〔音楽・アニメ製作〕(音楽プロデューサー)
作詞コトリンゴ「たんぽぽ」
こうの史代「みぎてのうた」
片渕須直「みぎてのうた」
サトウ・ハチロー「悲しくてやりきれない」
作曲コトリンゴ「みぎてのうた」/「たんぽぽ」
加藤和彦「悲しくてやりきれない」
飯田信夫「隣組」
編曲コトリンゴ「みぎてのうた」/「たんぽぽ」「悲しくてやりきれない」/「隣組」
主題歌コトリンゴ「みぎてのうた」/「たんぽぽ」/「悲しくてやりきれない」
挿入曲コトリンゴ「隣組」
製作朝日新聞社(「この世界の片隅に」製作委員会)
東京テアトル(「この世界の片隅に」製作委員会)
東北新社(「この世界の片隅に」製作委員会)
バンダイビジュアル(「この世界の片隅に」製作委員会)
双葉社(「この世界の片隅に」製作委員会)
MAPPA(「この世界の片隅に」製作委員会)
Cygames(「この世界の片隅に」製作委員会)
企画丸山正雄
プロデューサー真木太郎
制作MAPPA(アニメーション制作)
配給東京テアトル
作画松原秀典(キャラクターデザイン・作画監督)
美術こうの史代(劇中画)
男鹿和雄(背景)
武重洋二(背景)
録音柴崎憲治(音響効果)
片渕須直(音響監督)
東北新社(音響制作)
その他本郷みつる(クラウドファンディングで支援してくださった皆様)
小林靖子(クラウドファンディングで支援してくださった皆様)
あらすじ
広島に暮らす18歳のすずに、ある日突然縁談話が持ち上がり、彼女は戸惑いながらも軍港の町、呉に嫁ぐ。折しも太平洋戦争は激化、呉の町への空襲も日に日に激しくなる中、周囲の人々に温かく支えられながら、彼女は気丈に生きる。しかし、ついにその日はやって来た…。こうの史代の漫画をアニメーション化。すずの声を女優のんが熱演。
ネタバレは禁止していませんので
未見の方は注意願います!
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【クチコミ・感想】

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111.《ネタバレ》 (地元自治体の平和事業での上映会にて観賞)
原作未読。皆さんのレビューからして結構アレンジされてるようですので、あくまで本作についての感想です。
戦争の悲惨さが随所に込められていながら、悲しみを前面に押し出すことを極力抑えた演出が、逆にリアリティーとなって伝わってくる作品ですね。誰が死のうと、自分の身に何が起きようと、そのことに捕らわれることなく生きていかねばならなかった時代。かといって決して死に対して無感覚ではなかった時代。現代よりもずっと、日本人が命を慈しんでいた時代。今の日本のあり方に警鐘を鳴らすようなメッセージ性のある作品ではなく、戦中戦後の日常性の対比から、平和の大切さを教えてくれる作品でした。
上映会には子どもたちの姿が多かったけれど、低学年以下には難しかったかな?
タコ太(ぺいぺい)さん [映画館(邦画)] 8点(2017-08-13 10:03:49)(良:1票)
110.こうの史代さんの絵柄はどちらかというと苦手な方なのですが映画は多少マイルドになっていたので違和感なく映画の世界に入れました。
戦争を描く映画も漫画も多いけれど、市井の人々の生活を主として描いているのが良かったです。

日本にかつて戦争があった。歴史の教科書には描かれていないことが知りたいです。
いま戦争体験者は高齢になり、そのうち日本で戦争経験のある人はいなくなります。
その時に戦争があったということを思い出させてくれる作品は大切です。この作品もそうだと思います。
omutさん [インターネット(字幕)] 7点(2017-08-05 08:38:29)(良:1票)
109.とにかく、”のん”こと能年玲奈の声が素晴らしい。とても重要な要素だ。

わたしの母は広島の女学校出で、すずさんと同年代である。足が悪く映画館に連れていけないが、DVDになったら早く見せてあげたい。
そのあとにコメント付け加えようと思う。
爆裂ダンゴ虫さん [映画館(邦画)] 9点(2017-05-29 23:39:16)(良:1票)
108.《ネタバレ》 本作の原作漫画を遥かに凌駕する映画的演出で特記すべきは、まずは、呉の嫁ぎ先のロケーションです。山のふもと。斜面の畑。石垣。晴美と呉港を見渡して会話するシーン。

タンポポを飛ばすシーンで、周作と並んで石垣の上に座る場面など、高低と奥行きの描き方が圧倒的。そして呉で初めての大規模な空襲のシーン。「こんな時に絵具があれば」というモノローグ。青空に連続して描かれる破裂する爆弾。なんて美しい表現でしょう。また、時限爆弾の後の、黒地に線香花火のような落書き風の処理。こういうの、実写でやってもいいよなぁ、と思いながら見ました。


さて、もう一つ、大雑把な云い方ですが、映画を見た際に誰もが感じるであろう、隠喩の豊かさについても、原作で既に描かれているか検証したい、と強く思いました。

そこで、象徴について追記。やっぱり、本作において最も重要な色彩は白色なんだろうな、とつらつら思いました。思いつくまま白い色をあげてみます。
例えば、タンポポや白鷺の表すもの。金床雲とキノコ雲。ばけ物と鬼(ワニを嫁にもらうお兄さん)。或いは、ネーミングによる多重性、すずとりん、すずの妹の「すみ」(片隅のすみではないか)、「ふたば」という料理屋。遊郭「二葉館」。
これらは殆ど、原作通りですが、映画における白鷺のメタファーは原作をかなり超えるものです。
白いタンポポ。タンポポの綿毛。白鷺。白鷺の羽。波間の白うさぎ。白粉、白粉をふった、すずの顔。雲。アイスクリーム。包帯。砂。糖。白米。


ところで、これは映画的な話ではないので恐縮なのですが、御多分に漏れず、私も映画を見た後、気になって原作を読んだクチです。
何を一番確認したかったのかというと、実は冒頭の扱いでした。この映画を見た際に最も驚いたのは、冒頭、アバンタイトルで、幼いすずが船に乗って一人広島市内へお遣いに出ますが、その際にBGMとして讃美歌「神の御子は今宵しも」が流れ、広島市では、クリスマスの装いが描かれるのです。ちょっとこれには驚きました。

タイトルバックの「悲しくてやりきれない」以上に、このクリスマスソングに驚いたのですが、原作ではこのシーンは昭和9年1月の出来事として、描かれており、明かな片渕須直による改変なのです。

原作と映画との相違では、この部分は大して重要じゃないかも知れません。こゝよりも、夫・周作の過去の扱い、遊郭の女・白木リンの扱いの方が大きいかも知れません。
ただ、私にとっては、本作がクリスマスの映画として始まる、というのは決定的に重要な細部です。
ゑぎさん [映画館(邦画)] 9点(2017-03-28 05:40:00)(良:1票)
107.《ネタバレ》 淡い色彩、素朴な人物画、正確に緻密に描き込まれた戦前の広島の街並。大変美しいアニメである。柔らかく耳に響く広島弁も心地良かった。
最も美しいのは、すずや周囲の普通の人たち。朝には出勤し、かまどで炊飯し、洗濯をして畑の世話をする。生活のための仕事を当然のようにせっせとこなす普通の営みが、戦時下においてはとても輝かしく尊く感じられる。
細やかにユーモアを交えて描かれる人間関係。スパイを疑われるすず、このご時世であるから緊迫の北條家かと思いきや「憲兵さんは何もわかってないのよ」と皆でネタにして大笑い。つられて笑った。生活感のリアリティは気温まで伝えてくる。冬には手がかじかみ、夏はうだるような暑さ。「今日も暑いわねえ」20年の8月、あの日も暑かった。
この美しい人たちを破壊した戦争という「暴力」を憎まない人間がいるとは思えない。エンドロールが流れる中、席を立てずにただ鎮魂を祈っていたのは私一人では決してないだろう。声高に叫ばないが、強く強く心に反戦を訴える力のある映画だ。

私は声優という職業はプロの領域だと思っているので、役者であってもあまり歓迎しないのだが、本作のヒロインの声を担ったのんはすずに魂を吹き込む見事な演技をした。ぴったりだった。
tottokoさん [映画館(邦画)] 9点(2017-02-09 00:51:55)(良:1票)
106.キネマ旬報で第一位となったらしい。興行成績でいえばあちらのアニメやこちらの怪獣映画の足元にもおよばない(注:2017年1月現在)この映画に。やるね、キネ旬も。
la_spagnaさん [映画館(邦画)] 9点(2017-01-14 12:32:28)(良:1票)
105.《ネタバレ》 原作が好きで、アニメ化されることが分かったときは「また余計なことを」と思ったのですが監督、スタッフの皆様すいませんでした。
久しぶりに好きなアニメ映画ができました。
なによりいかにもな声優声がないのが私としては非常にとっつきやすかった。
のんって名前には違和感はありましたが、すずさんにマッチしてました。
アニメの声を役者があてると非難されがちですがいいじゃないですか。
しかし能年玲奈なのにすず。
いや別にいいんですが。
レトロに見せかけて表現や演出で今まで観たことのないような試みがなされているのも良かった。
今風のアニメとは違うまた別の新しいアニメの形を観せてくれました。
今風のアニメはそれはそれでいいと思うのですがこの映画のような流れがもっとあっていいと思うし、私は観たいです。
CBパークビューさん [映画館(邦画)] 9点(2017-01-14 01:30:06)(良:1票)
104.高評価なので期待値も高かったけど、それ以上の出来映え。幸福とか満足といった感情は自分の置かれた立場と周囲の人との相対的な部分による所が大きいように思うけど、平和と豊かさが当たり前の価値観では悲惨でしかない世界も、居場所さえ確保できれば人間は優しく逞しく生きていけるのだと思わせてくれる。涙を堪えきれないシーンが二度ほどありましたが、当時の人々の気持ちが分かったような気にさせてくれる、嘘っぽくないとても心に響く映画でした。→19.8.6二回目鑑賞
ProPaceさん [映画館(邦画)] 9点(2017-01-08 17:04:07)(良:1票)
103.《ネタバレ》 「また見たくなる映画」という類の映画では無いが、稀有のクオリティ、バランス。絵、アニメーション、テンポ、脚本、演出、音楽、声優、それらが全て調和していた。戦争は舞台であって、描いたのは主人公の人生と、人の在り方だったように思う。でも、それが見たければ原作を読めば良いだけのこと。この映画では、ただただ、能年玲奈の演技に圧倒された。彼女は琵琶法師の如く、自分を無にして物語を伝える力を持つが故、意図されたパワーが減衰せずにダイレクトで響く。いや、増強すらされている気もする。現代にクラウドファインディングがあって良かった。拍手。
コトリンゴの「悲しくてやりきれない」も、他のアーティストに劣らないとても良いカバーだった。バークリー音楽院卒だからというわけではなく、彼女の才能なのだろうと思う。

【追加】原作を読み直したが、いくつかの場面でアニメは原作を上回っていると感じた。もしかしたらこの監督は…すごい監督なのかも知れない…
よこやまゆうきさん [映画館(邦画)] 10点(2017-01-07 21:39:35)(良:1票)
102.噂通りの名作でした。

でも、好き嫌いで映画を見ている私にとっては、この点数です。
前もって情報を入れなければ、もう少し自然に楽しめたか。
一緒に見てた他の客との相性も悪かったかも。

改めて映画って人それぞれだなと感じました。

主人公の私小説的な物語。
登場人物は魅力的、ストーリーも良い、普通に。

肩の力抜いてみることお勧めします。
fujicccooさん [映画館(邦画)] 6点(2017-01-06 15:05:57)(良:1票)
101.忘れられない映画になりました。
よしふみさん [映画館(邦画)] 10点(2017-01-05 01:12:06)(良:1票)
100.《ネタバレ》 どれだけ話題になっていてもすぐに見られない田舎は不利だと思う。
原作を読んだことがあるので概要はわかっていたつもりだったが、始まってみると原作の世界が実際に動いて、カラーで(当然だが)、背景音楽付きで広がっていくのを見て背筋が少し震える気がした。個人的には特に序盤で、戦前の広島の繁華街(中島本町)や広島県産業奨励館を鳥瞰的に捉えた風景が出ただけで泣ける気分になった(その後の出来事を知っているからだが)。
また劇場予告編にも出ていたが、入港する大和が柔らかな緑を背景にして色鮮やかな信号旗をたなびかせ、艦上で多数の人が動いている情景には、無機質な鉄の兵器というよりも、そこにいる多くの人々に目を向けようとする優しさが感じられる。青葉の甲板で洗濯物を干していたのも乗組員の日常風景だったろう。ほか代用食をカラーにすると変にきれいで料理映画のように見え、すみれの花まで入っていたのはちょっと感動的だった。本来は葉を食うものだろうから、食用というより暮らしに彩りを添える工夫ということだろうが。
ちなみにわざわざ書くまでのこともないが爆撃と銃撃は怖かった。

物語に関しては、基本的に原作準拠のようなので特に言うべきこともないが、驚くのはリンさん関係がほとんど省略されていたことである。本筋との接続部分は残っていたようなので完全版を期待したい。また原作を知らずに見る人には、あまり最初から細かいことにこだわらず、まずは感じることを優先して見るようお勧めしたい。
原作になくて映画で加えられたものとして、細かいことだが周作が反乱の鎮圧に赴く際、法務はどこまでも秩序を守るのが仕事、というような台詞があった。これは夫婦関係に関していえば、水原に引け目を感じていた周作の面目を立てる形になっていたのだろうが、同時に周作が社会を維持する立場という意味も出ていたように思われる。その直後に呉市役所の困り事相談の看板が出ていたりもしたが、すずさんのような家庭の生活者とともに、その生活者が暮らす身近な社会を支える人々も加わってこの世界が続いていくという意味に取れば、家庭の生活者としてはちょっと自信のない自分であってもこの映画での居場所を見つけられる気がした。
この映画から何を受け取るかは人それぞれかと思うが、現代に生きるわれわれがこの世界に関する認識を深めるのに役立つよう、原作を含めたこの物語が広く認知されていくことを自分としても願っている。

なお余談として、自分としては原作にない「掃海特務艇第十六号」というのが微妙にユーモラスに感じられた(晴美さんもご存じなかったろう)が、その後の出来事をあらかじめ知っていたのでここで笑っていいのかどうかわからなかった。これはこういう名の知られていない地味な船に乗って、海軍の片隅で身体を張っていた人にも焦点を当てようとしたと解する。
かっぱ堰さん [映画館(邦画)] 9点(2017-01-03 19:58:12)(良:1票)
99.《ネタバレ》 世の中には「原爆は正しかった!」といまだに言ってる人がいるらしいけど、一方その頃我々japは、8月6日の呉で冗談言いあいながら草鞋を編む人々の映画を観て笑っている。我々japの勝ちだ。
no_the_warさん [映画館(邦画)] 10点(2016-12-30 22:28:53)(良:1票)
98.《ネタバレ》 この世界の片隅に・・・鑑賞後この言葉が心に染み入る。

事前に情報を仕入れすぎたので、いろいろ知っていたことが残念、
それでも、音や間、音楽は実感に勝るもの無し、とても響いた。

のんは素か演技か不明だが、この作品にはピタリとはまった、
女優を続けると大竹しのぶクラスにはなるんじゃなかろうか。

市井の人々が被る、戦争。
呉という場所であり、敵が誰か、状況を理解しながらも日々の生活は続く
苦しくとも、野草を楽しげに料理する描写などが
まだまだ序章であることが、後に痛烈に描写されていく後半は衝撃
焼け野原に泣いている子供を置く演出が反戦映画ではない
本当の反戦映画とはこの作品だと思った。

無音で表現された、原爆投下
壮大な社会実験だといわれたこの行為は、多くの犠牲と共に証明された
事実、この後、テロ+アルファ以上の戦争は世界から消えた

本当に、いろんな事を考えてしまう素晴らしい作品だ
鑑賞中は気兼ねなく泣けたが、劇場から駐車場までの途中や
夜、カレー屋での食事中など突然、胸が熱くなる思いに苛まれた
かなり、後を引く。2016年1位かも。
カーヴさん [映画館(邦画)] 8点(2016-12-09 10:28:40)(良:1票)
97.《ネタバレ》 原作未読。本サイトでの高評価が気になり鑑賞したが、なるほどその理由に納得した。

本作はジャンルでいえばいわゆる「戦争もの」に入ると思われるが、主人公は題名が示すとおり一介の無名の女性庶民であり、英雄でもましてや兵士でもない。舞台も戦場ではなく、普通の庶民の生活の場である。したがって本作では、庶民の側からみた戦争、本土に住む大半の市井の人々にとって、あの「戦争」とはいかなる体験だったのかが描かれている。その意味ではあの『火垂るの墓』と軌を一にするものの、こちらは悲愴感は控えめに、むしろユーモアや希望、力強さといったポジティブな感情に訴えかけくる違いがあった。
本作にはいわゆる悪人は登場しないし、残酷描写も控えめである。そのため、中高生などの鑑賞にも適していると思われるが、実際にあの時代に生きていた人々は本作での控えめな描写よりもっと大変で過酷であったことは(大人ならば)容易に想像できるはずだ。

おっとりのんびり屋の少女だった「すず」が18歳になり、戦争の暗雲が立ち込める中、相手もよくわからないまま広島から呉に嫁にゆく。
見も知らない土地の中で懸命に働くすず。早朝水を汲み、火をおこし、炊事をし、掃除、洗濯、裁縫…食糧が不足するなかでも、さまざまな工夫をして食卓を彩ろうとするすず。本作ではこうした何気ない生活や街並みなどが丁寧に描かれている。そのすずの狭い世界にも戦争は「少しづつ」影を落としていく。この「少しづづ」の描写が大変秀逸なため、観客も、すず達と一緒に忍び寄る脅威を追体験できる。
のどかな山野に襲い来る空襲また空襲、鳴り響くサイレンまたサイレン。そして、その空襲は、ついにすずの右手と晴美を奪い、さらに8月6日には….
玉音放送を聞いたあとの、すずが怒りを爆発させ「何も考えん、ぼーっとしたうちのまま死にたかった」と慟哭するシーンは、見る者の心をわしづかみにして離さない。

戦争が(いかなる大義名分があろうとも、たとえそれが正義といわれるものであったとしても)なぜ起こしてはいけないのか。もしわからなくなった人はこの作品を観ればよい。あの時代、何万人、何百万人の「すず」が「晴美」が、浦野家の人々が、北條家の人々が、確かに生きていたこと。そして今を生きる私たちの祖父母や曾祖父母がまさにその人々であったことを、思い出させてくれるだろう。

ただし、本作が投げかけるメッセージは単なる「反戦」などではない。

救いだったはの夫である「周作」の「すず」への変わらぬ愛情が物語のベースにあったこと。
お互いにとってそれは大切な人生の「居場所」だったのだ。

戦争という狂気の時下にあっても、「この世界の片隅に」こうした居場所さえあれば、人はたくましく生きていける。
灯火管制が解除された戦後の町に灯りがともっていく。その光のひとつひとつが愛しく思えた。
田吾作さん [映画館(邦画)] 9点(2016-12-04 23:24:11)(良:1票)
96.《ネタバレ》 居住する鹿児島での公開は12月ということで、実家がある福岡にて帰省がてら観賞。戦争の悲惨さを描いた映画や小説は数多くあるが、戦争中のほのぼのした日常を描いたこの映画は新鮮だった。平和で和やかな日々に静かに少しずつ忍び寄る戦争を丁寧に描き、そんななかでも力強く前向きに生きていく登場人物たちには生きる喜びにみちみちていて、観賞後は爽やかな感動がある。後半にガツンとくる描写もあるがそのバランスが絶妙でしっかりと喜怒哀楽をまんべんなく描いている。「火垂るの墓」の一方でこういった日常もあったのだと思った。
冒頭のコトリンゴが歌う「悲しくてやりきれない」ですでに泣きそうになってしまい、そして映画の後半、すずが感情を吐き出し慟哭するシーンが激しく胸に突き刺さった。
とにかく多くの人が観るべき作品であり、観てほしい作品。
それにしてもこのようなすばらしい原作のアニメ映画化が、クラウドファウンディングでしか資金集めできないという状況の日本映画界、まずくないか?商業目的のアイドルを起用した実写映画化ばかりやってる場合じゃないぞ全く。

(2017/1/14 追記)
観賞後にもじわじわ感動が広がっていき、日常生活を送るなかでこの映画を思い出すことが多くなった。鹿児島での公開も始まったので二度目の観賞。
本当に素晴らしい映画。
この映画は現代を生きる私たちと地続きになっている。
eurekaさん [映画館(邦画)] 10点(2016-11-24 22:45:50)(良:1票)
95.《ネタバレ》 心に沁みる、素晴らしい映画でした。主人公すずの喜怒哀楽のひとつひとつが心に響きました。本土が空襲を受けるほど事態が切迫しているなか、久しぶりに再会したすずの同級生の水原哲がすずのことを「普通になったな(普通になって良かった)、これからも普通のすずでいてくれ」という主旨のことをいう場面はグッときました。戦時中は普通(平穏、いつもと変わりない日常)へのあこがれがいかに強かったか、まざまざと思い知らされました。その時ふと高橋ジョージの「なんてもないようなことが幸せだったと思う」という言葉が頭をよぎりました。すずを演じたのん(能年玲奈)の演技は、少し抜けてるというかのほほんとしたすずによく合っていて、違和感あるどころかハマリ役とさえ思えるほどでした。また、コトリンゴの楽曲もとても素晴らしかったです。大貫妙子に似た声質ですが、それがまた自然に耳に入って心地よかったです。あと、エンドクレジットの最後の最後、バイバイと振られた手がすずの(爆弾で無くなった)「右手」だったことは見終わった自分の心をちょっぴり慰めてくれました。近い将来この映画が地上波で放送されたら、戦時中の市井を描いた映画の傑作として火垂るの墓に代わって毎夏放送されるに違いありません。そのくらい素晴らしい映画でした。
MASSさん [映画館(邦画)] 9点(2016-11-22 20:43:16)(良:1票)
94.《ネタバレ》 ほんの2、3世代前…こんな時代こんな日常があったという真実。

試写の評判をTwitterで知り、初日の午後 映画館へ。
テアトル梅田のロビーには人がいっぱい。上映中は立ち見の人までいて驚き。
舞台は戦時中。明るくふんわりと生きる主人公すずと一緒に、
私は、その時代の暮らしを体験した。
広島から軍港の呉へと嫁ぎ、新しい土地で新しい家族との生活が始まる。
物が無く食べる物にも苦労するが、失敗したり笑ったり。
それは今の私たちとさして違わない普通の暮らし。
私たちは、すずと一緒にくすくす笑い、家族とのふれ合いにホッコリし、時に涙する。
2時間の映画が、すずの生きる数年間にも感じられ…そして。

映画が終わった時、色々な感情があふれ、しばし言葉を失った。

片渕須直監督が現地で綿密に調査し再現した風景や暮らしは、全て当時の本当の姿だという。
祖父母から断片的に話を聴いたり、日本史の一部として知っていたその時代。
しかしこれは、どんな歴史書やドキュメンタリーよりもリアルな、VRのような時代体験だった。
すずさんの思いは、当時を生きた多くの普通の人たちの思いに相違ない。
ある意味、隠し、忘れてしまいたい過去。その良いところ悪いところ両方を
原作者の こうの史代さんも、片渕監督も知って欲しかったんだろうと思う。

これは、よく取材して丁寧に作られた、厳しくも優しい〝幸せのあり方〟を描いた最高の映画です。
墨石亜乱さん [映画館(邦画)] 10点(2016-11-16 01:57:53)(良:1票)
93.戦前から戦時中にかけての生活が、とても良く描かれていました。こういうところに目を付けた映画って、なかなかないんですよね。毎日のように空襲警報が鳴ったり、爆弾が落とされたりしているのに、割とのんびりしている印象を受けました。舞台の呉といえば、造船が盛んな都市だったと思います。戦時中は当然狙われたでしょうし、大きな被害も出たことでしょう。でもこの映画では、悲惨さではなく、一生懸命生きていく住民を、みずみずしく捉えていました。
shoukanさん [映画館(邦画)] 7点(2016-11-14 17:42:47)(良:1票)
92.《ネタバレ》 【先行上映会にて鑑賞】

今年は「こうの史代原作の初のアニメ化」という事で、期待やら不安やらクラウドファンディングやらと忙しく過ごした2016年でした。期待というハードルはエベレスト山頂よりも高くなり、それと同時に発生した宇宙空間よりも広く深い漆黒に染まった不安と、日々やんごとなく格闘する私でした。

「ブラックラグーンの片渕監督やし、原作モノのアニメ化は巧者なはず」「キルラキル以降ヒット作のないMAPPA製作やけど、大丈夫なんか(キルラキルはトリガーだよ!と、2017/10/07に気付く)」「主演は能年…あまちゃん観た事ねぇけど、どうなんやろ!」…等々の、期待と不安。

それでも、呉を舞台にするアニメを作る下準備の惜しみ無さを、ほとんどストーカーかよ!というレベルで観察させていただいたせいでしょうか。当時の風俗、流行、背景などの設定の緻密さ、丁寧さに、驚かされるやら呆れるやら。私の不安など霧散させる監督のコダワリっぷりには、まったく脱帽です。

しかし…アニメは総合芸術。準備期間の長さやコダワリなんぞと、作品のクオリティは決してイコールではありません。

「結局めっさハードル上がってるやん!うおおおおどうしよ!ハードルどころか、幕、上がってるやん!」と、期待と不安に駆られた満員の劇場、そして私。

「かなしくて~かなしくて」コトリンゴ手がけるオープニングが流れ、動き出す世界。この時の静かな高揚を、どう言い表せばいいのか、わかりません。喜怒哀楽のすべての感情が、静かにふるふると蠢動していたように思います。

鑑賞後「拾いそびれたエピソードが惜しかった云々」「こうの漫画の起承転結の巧さが、長編アニメにそぐわない気がしないでもない」などと、つらつらと思い耽っていましたが

「この世界の片隅で…生きてきて良かったなぁ 生きる意味、あったなぁ」で、締めくくられていました。

製作陣のすべての人に、惜しみない拍手と賛辞を。クラウドファンディングに参加できたこと、それ以上に、この映画に出会えた事を、私は一生誇りに思います。

蛇足ですが、聖地巡礼は済ませました。公開前なのに!
aksweetさん [試写会(邦画)] 10点(2016-11-05 03:26:36)(良:1票)
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【点数情報】

Review人数 151人
平均点数 8.20点
010.66%
100.00%
200.00%
310.66%
442.65%
595.96%
695.96%
72113.91%
82516.56%
93724.50%
104429.14%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 9.46点 Review13人
2 ストーリー評価 9.26点 Review19人
3 鑑賞後の後味 9.05点 Review20人
4 音楽評価 8.81点 Review16人
5 感泣評価 9.12点 Review16人
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