71.《ネタバレ》 例えば初代の「ゴジラ」、84年の「ゴジラ」、そして「シン・ゴジラ」など、
過去のゴジラが単体で登場する作品では、ゴジラが街に散歩に来たら人間から理不尽に攻撃され、
怒って反撃するという流れであったことが多いと思います。
ところが今作では、ゴジラが明確に人間に対して敵意むき出しである点は、実は斬新ではないかと思います。
また、人間ドラマがこれだけ濃いゴジラ映画というのも、初であろうと思います。
多くの方が称賛する特撮も素晴らしいですが、今作で印象に残ったのは、音響、音楽。
IMAXで観たのですが、鳴き声、足音などの音響は凄まじかったです。
そしてゴジラファンなら誰もが気にする、あのテーマ曲が使われているか、
まさにドンピシャのタイミングで鳴り響き、ファンにとっては至福のシーンとなっていました。
過去の音源を使用した「シン・ゴジラ」と違って、今回は新録音ですが素晴らしい編曲と演奏です。
非常にマニアックな話ですが、1983年、「SF交響ファンタジー」初演の熱い演奏を多分に意識していると思われます。
熱い音楽で定評のある佐藤直樹ならではの編曲だろうと思います。
以下ネタバレです。
過去の戦争における非常にデリケートな問題ですが、
当時の航空服を着て敵に突っ込んでゆく主人公が勇ましく見えてしまうのは、
少々、自分にとって違和感がありました。
また、ラストシーンは過去の某作品そのまんまであるし、続編を意識した怪物映画の定番であるが、これは蛇足だったと思います。
今回は人間ドラマが濃いだけに、それまで描かれていた人間の努力の尊さがひっくり返されて興ざめです。
素直にハッピーエンドで良かったのではないかと思います。
こういう多少の不満点はあるにしても、
ゴジラ映画史上、かなりの上位に入る出来栄えで、特撮についてはベストと言って良いでしょう。
もはや着ぐるみというのは過去の遺産となってしまい、
等身大の着ぐるみをいかに本物に見せようとするかという面白さがなくなってしまったのは寂しいですが、
昭和の時代からの特撮映画の歴史を鑑みると、日本の特撮もハリウッドに全く劣らず、ここまで来たかという感慨があります。