8.《ネタバレ》 またまた出来てしまった原作未読の観客を
冷酷に突き放すかのようなお粗末極まりない脚本の映画が・・。
なぜ西崎と落合が命を掛けてあの山に登っているのか
肝心な動機の部分を何故か強引にも削ってしまった為
原作を読んでない観客にはまるで意味が分からない
ベタで大仰しい作品に映るだろう。
編集が下手であるのは言うに及ばずストーリーテリングもまるでなってない。
尺は131分とやたら長いのにどこで無駄な時間を喰っているのかと
憤りというかファンにとっては甚だしい作品になっている事が唯一『許さない!』
ただやはり個々の役者の演技に関しては見るべき点が多々ある。
大沢たかおの悲壮感漂う前半の見せ方や
吉田栄作の陸自3佐を演じる職業軍人の見せ方など
別に雪山登山のドキュメンタリー映画を観せるワケではないのだから
映画としてのエンターテイメントに徹した演技はこの見せ方で良いと思う。
松嶋菜々子が産休中の今、当代隋一の若手女優としての貫禄を見せ付けた
竹内結子の記者役もまさに完璧な演技。
ラストの西崎に対するセリフ『絶対に許さない』は間違いなく
賛否両論分かれると思うが(パンフのインタビューに書かれている)
台本を監督から渡された時に見た『絶対に許さない』の文字の羅列に
その文字がどうにも理解できず実際に撮影最終日までどういう風に
演技したら良いのか物すごく悩んだそうだ。
しかし監督やプロデューサーから『許さない』の言葉には
色んな意味が込められているので全部それらをひっくるめて
『許さない』と言って欲しいと言われたそうだ。
ただそこは映画を観た観客全てに委ねる形で真意を掴みとって欲しい。
そんな感じ方で良いのじゃないかと演技したと言う事だ。
そんなワケでこの手の軍事サスペンス物はまだまだ邦画には未熟な分野ではあるが
確実に伝えていく意義のあるジャンルであると思うので
色んな監督に色んな作品を作って貰って成熟させていって欲しい。
そんな雰囲気と意気込みが感じられた作品である。