1.「最高」だ。何が?って、「安藤サクラ」に決まってる。
“どん底”が住処の女。ヤケクソで始めた一人暮らしから、悲惨な処女喪失と失恋が更に追い打ちをかける。
鬱積という鬱積に呑み込まれそうになったとき、彼女はそれを振り払うように、ひたすらに拳を振るい始める。
振るう拳の速度が上がるほどに、彼女は生気を取り戻し、美しくなっていくようだった。
見紛うことなき“サイテー”の状態からの、ささやかだけれど格好良すぎる“ワンス・アゲイン”。
こんな「女性像」を体現出来るのは、いまやこの女優をおいて他にいるわけがない!と、心底納得させられる。
2年前に「愛のむきだし」と「サイタマノラッパー2」を観て以来、安藤サクラという女優の“本物感”はひしひしと感じていたけれど、どうやらここにきてこの女優はとんでもない領域に達してきているようだ。
爆笑問題の太田光が激賞していたように、「バケモノ」という表現が相応しい。
“汚れる”ことが出来る良い女優は他にも沢山いる。
でも、醜いまでに汚れると同時に、可笑しさと、愛くるしさと、格好良さ、さらにはエロティシズムまでも孕ませることが出来る女優は唯一無二だ。
今作ではその上に、驚愕の身体能力まで見せつけてくる。その存在感は他のどの女優にも当てはまらない。まさに「バケモノ」だ。
この映画は、キャッチコピーの通りに呆れる程に痛い恋愛映画であり、遅すぎる青春映画であり、過去最高級のボクシング映画である。
ただ、それらを全部ひっくるめて、最高の“安藤サクラ映画”と表すのが最も相応しかろう。