46.《ネタバレ》 時代に抗うように、懸命に生きた人々の話です。
悲劇もあるし、滑稽さもある。
私は同時代を背景とした「子の前で芝居をする父親」の映画を思い出しましたが、本作の登場人物たちにはそういう健気さはありません。
エゴイストだったり変人だったり。
ステロタイプでない人物造形が私は好みですが、こういうこわれかけた人たちを好ましく思うかどうかが、この映画を好きになるかどうかの分かれ目かもしれません。
リーフェンシュタールの映像を知らない人はわからないだろうなあ、というシーンがありましたから、ほかに、私が知らないネタで、意味をよくつかみかねているシーンもあるのではないか、と思いました。
キャスティングがよかったです。
子役は、少女のひたむきさがよく出ていたし、主な4人の登場人物がそれぞれ適役でした。
意外だったのは、タトゥーロの伊達男ぶり。
やっぱ役者やのー。
リッチとブランシェットの対比もなかなか見ごたえありました。
2人の演技はほぼ完璧、といってもいい出来だったと思います。
それにひきかえ、(ほかの方もおっしゃっていますが)、ジョニー・デップの役のキャラクターづけはいまいちだったかも。
これは演技ではなく、脚本、演出の問題ですね。
もう少し人間性が具体的にわかるエピソードを入れてくれないと、涙が唐突に感じられてしまいます。
粗野なセックスシーンも、女性監督とは思えないほどの乱暴さ。
彼の不器用さの表現だったのかもしれないけど、ほかのエピソードと、いかにもミスマッチ。惜しいところです。
余韻を拒否するラストに最初はとまどいましたが、最近、予定調和的な終わり方の映画が多すぎ。
これでいいのだ、と思いました。
なぜ作者は余韻を拒否しているのか。
安っぽい感動作にしたくなかったのでしょう、きっと。
最大に納得いかないのはタイトルです。
いくら印象的に使われている音楽だといっても、その「原題」をもってくるなんて、私には単なる思い付きにしか思えません。
こういう映画が好きな「硬派」の人の心に届かないタイトルです。これは、いけません。