283.流行りの3D映画を初めて観た。
その「初体験」がジェームズ・キャメロンの12年ぶりの新作で、本当に良かったと思う。
革新的な映像を見せる映画に対して、“未経験の映像体験”なんてキャッチコピーはよく使われるが、今まで観たどの映画よりも、この映画こそその常套句にふさわしい。
まさに、「観た」というよりは、「体験した」という表現の方がぴったりとくる。
正直、危惧の方が大きかった。
「タイタニック」以降、音沙汰なかった巨匠が、12年ぶりに挑んだ最新作は流行りの3D映画。
個人的に、3D映画に対しては、最新技術に頼った安直さが伺えて興味がなかった。映画の「本質」をぼかしているように思えたからだ。
大々的に広告はしているけれど、ただただ資金と時間を浪費した“超駄作”に仕上がっているのではなかろうか。と、不安を抱えたまま劇場へ入った。
初めての3Dグラスは、非常にかけ心地が悪く(眼鏡をかけているので尚更…)、上映前に益々萎えてきた。
しかし、本編が始まるにつれ、危惧とか不安とかそういうものは一蹴された。
それ以上に、今ここにある自分の日常的な存在自体が、どこか遠くに吹き飛ばされる感覚を、終始覚えた。
冒頭から間もなくして、すっかり映画世界に引き込まれた。
“引き込まれた”という表現を映画の感想で多々使ってきたけれど、今作ほどその表現にふさわしい映画はないと思う。
まさに「体感」。出演者の息づかいをスクリーン越しに感じるのではなく、自分自身が彼らと共に息づいているような感覚。それは紛れもない未体験ゾーンだった。
素晴らしい映画によくありがちなことだが、この映画は、うまく形容する言葉が見つからない。
『未開の惑星を侵略する地球人、スパイとして先住民族の中に送り込まれた主人公、やがて主人公は愚行から目覚め先住民と共に地球人の侵略に立ち向かう。』
と、プロットをただ言葉にするとあまりにありふれている。
が、そこに加えられた“光”と“音”によって、圧倒的な価値が生まれる。
それこそが「映画」そのもののマジックであると思う。
3Dという新たな映画表現によって見せ付けられたのは、そういう根本的な映画娯楽の魅力と、
12年ぶりに復活したエンターテイメント映画の大巨星の、絶対的な“瞬き”であった。
“ゼロ”からの圧倒的な「創造」。そのすべてが、凄い。物凄い。