27.《ネタバレ》 誕生から死まで『オーメン』のダミアンを見るようだった。自ら殺人を犯すまでもなく、主人公に関わる人間は皆ろくな死に方をしない。搾取する側の貪欲な人間として描かれているから、彼らの哀れな末路がいかにもエンターテインメント。また、主人公が職人気質を残酷なまでに貫き、最高傑作を制作後、虚無感に陥り自ら命を絶つさまは、芥川龍之介の『地獄変』と酷似している。けれどもグルヌイユの決定的な個性は、臭覚で得るもの以外は無関心であること。名誉欲、物欲、性欲、人を困らせて快感を得ようとも思わない。ラストでも香水の威力を確かめれば満足で、支配欲はない。これぞ究極の職人気質では。さらに絶世の美女より、匂いの初恋ともいうべきプラム売りの少女の方が、彼にとってはその死が重い。視覚で得る美は臭覚の美より下だからだ。ただ、殺害される前にローラが投げた眼差しの意味は大きい。彼女が見た侵入者の表情は極悪非道には見えず、しかし体は棍棒を振りあげている、そのギャップにぴんと来なかったというところか。グルヌイユのためらいは、無邪気で美しいものを壊す罪悪感を呼び起こしたことから来たものだ。退化した尾の名残として人間に尾骨があるように、無意識に人間らしい躊躇が脳裏をかすめたのだろう。その瞬間の表情を、グルヌイユ本人のではなく、ローラの顔が鏡のように表現しているのだ。媚薬の香水をかぎ、また人々の愛の享楽ぶりを見て、彼自身もプラム売りの少女から癒しを受けたいという気持ちにつながったのかも。グルヌイユの不幸は、欲してやまなかった至高の香水が決して心の渇きを癒すものではないと知ったこと。生甲斐を失った職人ほど哀れな者はいない。 【tony】さん [DVD(字幕)] 10点(2007-10-02 11:00:19) |
26.《ネタバレ》 惜しい…。序盤から処刑のシーンまでが8点。処刑のシーンからラスト前までが4点。ラストが7点。平均して6点くらいでしょうか…。処刑のシーンまでは発想も面白く斬新で、丁寧な作り、緊張感、音楽、雰囲気、映像…全て好印象だったのですがね処刑のシーンは…色んな意味で絶句です!!普通に処刑されて、香水が他の人に発見されてみんなが驚く…そんな終わり方ではダメだったのですかね…。現実的にもありえそうな話だった所が、面白く緊張感につながっていたのに、処刑のシーンで一気に興ざめ。「こんなんありえるか!」って思ったら冷めてしまいました。非常にもったいない。ただ、自分の出生した土地で迎えるラストはねなかなか深い終わり方で悪くはないかとは思います。最後、自分に香水をいっぱいかけて襲われるシーン、「稲中卓球部」で前野&井沢が「やりたがり2000」という媚薬を自分にかけまくって、岩下&神谷に襲われるシーンとかぶったのが印象的です…。 【グングニル】さん [DVD(字幕)] 6点(2007-09-27 19:05:35) |
25.《ネタバレ》 映像から匂いがあふれる様な、不思議な映画でした。 行動に大きな影響与える匂いがどのようなものなのか興味を持ちましたが、 最後の一滴が、、、。 覆いをして匂いの抽出をしていましたが、「匂いなし」にするところが 映画として綺麗だなと思いました。 【たこげるげ】さん [DVD(吹替)] 7点(2007-09-16 01:30:45) |
24.匂いをテーマにしたファンタジー映画に思えました。想像してたのはリアルな殺人鬼のサスペンス映画でしたが、全然違ってて、不思議で邪悪なファンタジー映画みたいな感じです。こんな映画は観たことありそーで今までになかったかも。映画を観終わった後も、色々な匂いに興味を持たせてくれて、匂いって普段全然意識してないから、色々匂ってみたい、匂いを脳で理解したいって気持ちにさせてくれて、思わずポップコーンをクンクン、でも、やっぱりポップコーンの匂いでした。あ、映画の方は最初から最後までずっと集中できるほど楽しめましたが、後で冷静におもしろさを判断すると、おもしろいんだけど後一歩ってなりました。 【なにわ君】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-09-07 03:28:59) |
23.《ネタバレ》 冒頭からの市場の暗鬱とした中世ヨーロッパの雰囲気は良かった。 だが・・・原作を読んでいないのでなんともいえないが、ミステリーやサスペンスという観点からみると全然面白くない。 ダスティンホフマンなんで出たのだろう?この作品に・・・ 最後に主人公が食べられて?無くなってしまうシーンは呆れて笑えました。 CMでおすぎのコメントが相変わらず大仰だったのを思い出しこの時点で鑑賞するのをやめておけば良かったと後悔 【りりぱっと】さん [映画館(字幕)] 2点(2007-07-23 17:39:02) |
22.ありえねえ。でもあの乱交シーンが、その説得力を醸し出している。 【no_the_war】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-04-24 01:24:07) (良:1票) |
21.《ネタバレ》 この物語、副題には『ある人殺しの物語』とあるが、実はそこに「物語」がない。主人公は匂いをもたない人間であり、それは同時に自己が希薄で「こころ」がないことを示す。故に、彼には自分のための物語、自己と他者を繋ぐ物語が一切ない。映画は、主人公が次々と殺人を犯していくのと同時に、13人目の被害者となる女性の日常をも映し、その接点ともいうべき二人の邂逅の過程をドラマチックに描いていくが、その邂逅自体のドラマ性をあっさりと否定してみせる。 では、彼は何を目指していたのだろうか?彼は世界を動かしてみせる。その現実性うんぬんは別にして、非物語的で即物的な「パフューム」によって人心を把握する(「愛情」ともいうべき)幻想を顕現してみせるのである。 彼は「パフューム」によって世界を動かすが、最終的にそれを受け入れることができない自分を発見するに至る。それこそがこの映画の救いなのであろうか。しかし、主人公が群集を前にして流す「涙」に僕は全くと言っていいほどリアリティを感じなかった。僕らの世は無知にあえぐ18世紀のパリではない。情報過多の21世紀の日本である。同じような非物語で貫かれた世界でありながら、そのバックグラウンドとなるべき現実感には決定的な違いがあるような気がした。 主人公が流す涙のリアリティをそれを誰もが理解しないという現代性に通じる現実によって否定してみせる。もし、そうであれば、僕はこの映画のすごさを感じるが、その辺りの意図はよく分からない。いずれにしろ、そういった構造分析的な意匠では僕らの「こころ」を響かすことができないことだけは確かである。 最近、東浩紀の『ゲーム的リアリズムの誕生』という本を読んで、同じように「どんより」とした気持ちになったが、彼が提唱する「物語の死」とか「物語の衰退」と呼ばれるポストモダン的な状況やデータベース化した環境下での新しいコミュニケーション社会とそれを前提とせざるを得ない新しい批評体系というのはとても理解できるが、そこには全くと言っていいほど、「こころ」に響くものがない。 この「どんより」感はもう自明であり、仕方のないものなのかもしれないが、僕らはいつかその「どんより」感の中でもゲーム的リアリズムによって「こころ」をふるわせる日がくるのであろうか。そういうことを想起すると、また「どんより」としてくる。。。 【onomichi】さん [映画館(字幕)] 7点(2007-04-20 22:55:10) |
20.《ネタバレ》 身の毛もよだつような不潔シーンから始まるが、不思議と汚さを感じなかった。ジャンが美しい娘達を殺していく様子も淡々としたもので、静寂さえ感じた。そんな無味無臭な感じ(?)は、彼自身のことだったのかと納得。それじゃ、寝ている犬の横を歩いても気付かれないよね。ラスト近くのビックリシーンではアゴが落ちてしまったが、これほどまでにずっと緊張した映画は久しぶりだった。 【あまねね】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-04-20 15:05:28) |
19.こりゃオイラにゃ書きようがないよ(泣)! まいりました。 一応、原作持ってます。出版された時は大評判でしたからねー。途中でやめちゃった(まだ、なめし皮職人にもなってない時点でやめた)のが悔やまれます。家に帰ったら探して読もうっと! 【エスねこ】さん [映画館(字幕)] 10点(2007-03-27 22:09:55) |
18.《ネタバレ》 好き嫌いが別れるだろうと言うのは仕方がない題材ですよね。けれど、冒頭の目をそむけたくなるような悪臭漂うシーンから、女性の甘く芳しい香りまで、本当に香りを感じる事が出来る上手さ!ぐいぐい引き込まれて行きました。ジャンの行動はもちろん道徳的には許されないし、人殺しなんだけれど、彼の偏ったしかも恐いまでの純粋さに、どんな素晴らしいパフュームが出来あがるんだろうと、ドキドキしている自分がいました。弟子の才能に嫉妬しながらも持っている知識を全て伝授するダスティン・ホフマン、愛娘に対するアラン・リックマンの異常とも言える愛情ぶり・・・捕らえて拷問されても「だって必要だったから」そう、ジャンにはただそれだけだった。そして仕上がった究極のパフューム・・・。納得しちゃえました!だからこそそれだけが先行して話題になってる集団のセックスシーンも私にはなるほどぉと思えたし・・・。ああ、面白かった・・・。 【らふらんす】さん [映画館(字幕)] 9点(2007-03-25 01:12:57) |
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17.《ネタバレ》 少々甘いかもしれないが満点、この監督には良いツボ、好みのツボを突かれるのでどうも点が甘くなる。オープニングのグロな映像から引き込まれ、パリの雰囲気、衣装、映像、音楽とすっかりハマリ込みました。生まれた時から人間らしい扱いを受けずに育った香りを持たない主人公、この彼が自らの持つ特殊な技能、自らの存在証明のため、究極の香りを探求するあまり殺人を繰り返してゆく。明確なポリシーを持った犯罪者によって生み出された究極の香りは人々を官能と幸福の世界へと誘う。彼の殺人は、究極の香りの効能を知った上での計画的な完全犯罪であり、その目的を達成した彼は、自らの存在価値を失い、自らの生まれた地に還ってゆく。最後の女性との間に愛が生まれれば何かが変わるのでは?という淡い期待すら打ち砕く犯人は、香りの求道者であり、この見事な犯罪者と共に、香りという映画で表現しづらい表現を見事に映像で香りを表現しきっていることに感服。 【亜流派 十五郎】さん [映画館(字幕)] 10点(2007-03-18 23:13:15) |
16.わたしには理解できない映画でした。濃い!らしいという感想を聞いただけで、情報不足の中、話題作だからと何気なく見てしまったためなのか、この主人公の行動が異常で怖いわ~、という感想しか出てこなかったです。怖くて思わず早送りしてしまいました。 【jiji】さん [DVD(字幕)] 2点(2007-03-18 18:51:02) |
15.《ネタバレ》 落ちは何なんだと思いきや、地球上から消えてなくないる。分かんないぞー。香水を浴びすぎると、中和しちゃうんだろうね。でも、面白かった。細かいことだが元の雇い主が自白して絞首刑はないだろ。 【オドリー南の島】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-03-18 11:55:36) |
14.《ネタバレ》 劣悪な環境で生まれ育った男は人を愛す/愛されることを知らない。道徳/倫理などもってのほかだ。ただ自分の感覚・本能に従って行動するだけ。「匂い・臭い」に執着しながらも自分にそれがないことを知ったとき、それを無我夢中で追いかける男の姿は滑稽にも哀れにも映る。処刑台の上で男は自分の犯した殺人の罪の意識と共に自分が本当に求めたいたものを知る。男の涙は自分の愚かさの象徴とともに失恋の痛みでもある。原作は未読だが、男が自分の人間性を認識する装置としてラストは必要だったのではないか。殺人は行き過ぎかもしれない。しかしもし男が普通の環境で生まれ育っていたならば調香師として成功し普通に恋愛し家庭を築いていただろう。私には男はとかく不器用な人間にしか見えない。彼の心の痛みは私達の心の痛みでもあるのではないか。 【もっちー・Ⅰ】さん [映画館(吹替)] 8点(2007-03-16 17:39:00) |
13.《ネタバレ》 原作は未読ですが映画の印象は残酷なお伽話という感じ。オープニング魚市場のシーンは「コックと泥棒…」的なグロテスクな映像で「ヨーロッパの映画はこれだから…」と思っていたけれど、さすがに革なめし屋では遠慮してくれたのでホッとした…でも最後があれじゃねぇ。 あれだけの類稀な才能を持ちながら人を殺し、大騒ぎを起こして結局何も残らない、残せないってのが哀しいですね。ローラ役がお人形さんのように美しかったのが◎。それとやっぱりああいう映画はフランス語でお願いしたいっす! 【芝居好き!】さん [映画館(字幕)] 5点(2007-03-16 15:18:26) |
12.《ネタバレ》 自分の行ないがばれないために、そして恐怖によって嫌な臭いを出さないために、 主人公はつぎつぎと女を撲殺していく方法を選びます。 なんでこんなに評価が低いのか首を傾げてしまいます。 最近見た作品ではベストでした。 ナレーションは冗舌。最初はちょっと多すぎる。ここまで言わなくてもわかると思ったのですが、だんだんと計算されたものじゃないかと思うようになりました。 つまりこうまで多いと逆に沈黙部分が異様な意味を持って浮き上がって、強烈な印象を与えてきました。 テーマは「自分の存在意義」ということでしょう。 自分はなぜ生まれてきたのか。 自分なんかこの世にいなくたってかまわないんじゃないのか。 なんの役にたってるんだ?と一度でも悩んだことのある人は必見です。 ネタバレになるでしょうが、 最後の犠牲者・・・彼女は・・他の女達とは違い、無理やり撲殺されたんじゃなく、 彼女みずから犯人に共感して、進んで身を投げ出したんじゃないかと思えるところもありました。 彼女も主人公ほどではないにしろ、嗅覚や勘にすぐれ、 また、僧院にいれられ、好きでもない人と無理やり結婚させられるという・・・ まさに「自分喪失の運命を辿るという予感」に悩んでいたゆえに。 これは主人公とある意味同じ悩みだったと感じました。 彼女を本当に必要としてくれる人間は、彼だけだったのです。 【うさぎ】さん [映画館(字幕)] 10点(2007-03-12 18:35:28) (良:2票) |
11.《ネタバレ》 剃ったのは本当に髪の毛だけなのか? 【デヘデヘ】さん [映画館(字幕)] 6点(2007-03-12 17:51:42) |
10.延々と主人公の心情を読み上げるナレーションにはちょっと中だるみしなくもないが、全体としてはよくまとまり、上映時間の長さを感じさせない。主人公ジャン=バティスト演じるベン・ウィショーのギスギスとした演技はなかなかのものだったと思う。……映画にすることの出来る視覚でも聴覚でもなく、嗅覚をいかに表現しているかと期待したが、その部分に関してはちょっと期待はずれ。冒頭のグロい映像や花畑だけでなく、もう少し新しい表現をしているかと思ったのだが。全体としてはドキュメンタリータッチな物語だけで、個人的には「香り」というテーマには今一歩及んでいないように思う。……香りの追求と道徳の狭間で苦悩した主人公と、その結果の人殺しの選択、という筋書きを思い描いていたが、最初からいきなり人殺しに走り、我が目的の材料のためだけに躊躇なくエゴをむき出すバティストには、さっぱり共感できなかった。それでも映像のクオリティには見応えがあったし、まず満足。オリバー・ツイストにもあったけれど、昔のヨーロッパって、あんなに不潔で汚かったのかな。 【six-coin】さん [映画館(字幕)] 7点(2007-03-12 01:34:29) |
9.いや久しぶりです、新作映画にこんなトンデモな(い)絵を見せられたのは。★正直言えば、予想もしなかった結末というわけでもなかったけど、とにかくあの力技のクライマックスには参りました。まあそもそも「香水とはなんぞや」と考えればあれもなるほどアリなんでしょうが、まさかほんとにねえ(笑)。引いちゃうヒト、腹立てるヒトそりゃいるでしょう。僕は『やったあ♪』スイマセン、内心爆笑してました。★前半は抜群に面白いです。ドン底の出生、数奇な運命で今は衰えた調合士に弟子入り、たちまち頭角を現す。でも「匂い」に取り憑かれた彼は既存の香水には飽き足らず、トラブルを起こした挙句師匠の元を飛び出す。寡黙な主人公を御伽噺の語り部のようなナレーションが補い、物語をぐいぐい引っ張る。正直グロいだけでアクションも何もないこんな話にこれほど引き込まれるとは思いませんでした。★後半は少しだれたかな。パワーは落ちてないんだけど、何しろ長尺な上同じようなテンションが続くので、どうしても飽きます。しかしそこへ出現するあのクライマックス(笑)!!みんなエキストラさんですか?CGなしですか?でしたらお疲れ様です。ついでに殺された女性達の死体も、人形じゃなくて演技ですか?だったらますますお疲れ様です。★点数はベースとしては7点、前半の面白さと後半のダレでプラマイ0。クライマックスに+1、ラストに-1、サイモン・ラトル×ベルリンフィルという無駄にゴージャスなBGM(迫力違うわ・・・)に+1、よって8点です。 【wagasi】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-03-12 00:14:29) |
8.《ネタバレ》 香水のかぐわしさ以上に、腐臭や悪臭の方が漂ってくる映画でした。突っ込みどころも満載で、悪ノリしてるんじゃないかとしか思えないシーンが随所にありました。特に処刑場でのシーンとパリに戻ってからの一幕には、目がテンになりそうでした。まあ総じて言えば面白かったのですが、何とも評価に困る作品です。そもそも、何故殺さなきゃいけないんだっけ? |