30.《ネタバレ》 新三部作の締めくくりとしては満足できる出来であった。
前作で行く末が案じられたこのシリーズだが、JJは考えうる限りでうまくまとめたと思う。
さすがにパルパティーンの再登場は唐突だし、(なんとオープニングロールで登場させてしまう)
どうやって生き残っていたのか合理的な説明はほとんどない。
「実はこの人は生きてました」的な展開はよくある手法だが、スター・ウォーズでは使ってほしくなかった。
レイがパルパティーンの孫(シスの末裔)という設定は、おそらくEP7の制作時から、いくつかある
オプションのうちの一つとしてあったのではないか。レイの生まれつき強いフォースやライトセーバーの構え、
時折見せる激しい表情はそれをうかがわせた。
ただし、パルパティーンに孫がいるという設定はEP1~6の話の流れから無理があることは確かだし、
制作サイドでも当初からその設定は本線ではなかったのだろうと思う。
EP8のファンの反応を見て、やっぱりこのままだとマズイな、という感じで、思い切って路線変更した
のではないだろうか。
レイがシスの血縁ということになり、皮肉にもEP8であっさり裏切られたレイの素性の解明としては、
考えうるベターなリカバリー策であり、スター・ウォーズのテーマの一つであるフォースのバランス
という側面では、結果的に物語に深みを持たせることになった。
しかし最終的にスカイウォーカーの血筋が死に絶え、シスの末裔が生き残ったことに
納得できない人は多いのではないだろうか。
心配だったレイアの登場場面は意外にも多くあり、本人が死去したとは思えないぐらい奇跡的な
シーン作りが行われている。本作での役割も重要性が高く、自らの命(フォース)をもってして
カイロ・レンに「ベン」と語りかけるシーンはエモーショナルな場面だし、ハン・ソロの幻影がベンに
やさしく語りかけ、ライトサイドに復帰させる場面はスター・ウォーズ唯一とも言える泣ける場面だ。
あと、ローズとフィンの余計な恋愛模様が描かれなかったことも、EP8の反省からだろう。
他にやや難点と感じたのは、ロケーションが目まぐるしく変わりすぎて、人名や地名についていけないし、
ラストの艦隊戦は、スピード感やスター・ウォーズらしさという面で、ローグ・ワンのほうが
やや出来がよかったようにも感じた。
果たして、スターの輝きを失ってしまったランドまで登場させる必要はあったのだろうか。
総じて振り返ると、物語のアウトラインと人物設定がEP7~9で統一されていなかったことが悔やまれる。
これは監督の采配よりも、ルーカスフィルム、ディズニーがビジネス優先で一貫した制作体制をとらなかった
ことが原因だと思う。ロード・オブ・リングのように、初期の構想から同じ監督・スタッフで
全作を通したシナリオを組んで進めていれば、もっと深く納得感のある物語にできたであろう。
しかし、JJは最後によくやってくれた。ありがとう。
そして全9作に出演したアンソニー・ダニエルズ、
素晴らしい音楽を聞かせてくれたジョン・ウィリアムズ、お疲れさまでした。