109.《ネタバレ》 いま見終わりました。素晴らしい映画だと思います。
しかし同時に相当不快でもある。
私を含めて子を持つ親がこの作品を見て憤りを感じない人は居ないのでは無いでしょうか。
ですが口惜しくもこの監督さんは日本を そしてこの現代社会の本質を良く知っている。
親から見捨てられた子供がどう社会から孤立するか。またどうやって追い詰められて行くか。
鏡を見上げながら歯磨きをする子供。子供を見下ろしはしてもまるで無関心な大人。
冷たく事務的に催促してある日呆気なく止まるライフライン。
裕福で鷹揚な大家。ガサツで高圧的なコンビニ店長。
そして揃いも揃って無責任で甲斐性無しでどうにもならん親達。
確かに陳腐じゃない。リアリティーが有る。
だから非常に不愉快だが認めざろ得ない。
またこれだけ重い題材を普通にサラリと撮ってしまっている所に
作り手の非凡なセンスが光っていますね。
最後に死んだ妹の亡骸を飛行場に埋める明のシーンがこの作品の演出らしい演出でしょうか。
また説明がましいのはこの部分のみですが
明が「以前にも福祉事務所を頼ったらみんなバラバラに成って大変だったからもう嫌だ」
と、さりげなく言わせています。
ラストを見れば彼らはたぶん全員が窮して死んでも自ら警察や福祉事務所には助けを求めないのでしょう。
東アジア随一の先進国と言いながら内実は余りにも未熟で悲しいぐらい平和な日本。
しかしこの子達はこれで良いんだ。死んでもそれまでは自由である方が幸せだ。
だがそれなら最初に実際の事件をモチーフになんて言うな!
と、一喝して終わりに出来ない所がこの作品の憎い所であります。
逆にそういう反応が有るからこそあえて冒頭のテロップは入れたんでしょう。
入れる事により確かに注目度は大きく成り観る人間も多く成る。
しかし出来上がった作品が愚にも付かない駄作ならこの監督さんの評価は大きく下がりますよ。
つまりそこがこの監督さんの世間に向けて仕掛けた部分であり
カンヌをはじめとした多くの海外映画賞受賞に到った経緯でも有る。
そして低劣なマスコミネタで終わるはずだったこの事件をどういう形であれ当時大きく社会問題化させた。
その功績も含めて今回は9点献上します。