105.《ネタバレ》 田舎の原風景がアニメの中に生きる「トトロ」。
宮崎駿の数ある傑作の中で、「トトロ」はもっとものびのびと、もっとも自然豊かな映画ではないだろうか。
説教臭い部分もほとんど無いし、とにかく広い大地を走り、飛び回るような解放感がある。
そこに日本家屋の居心地の良さ、夏のほどよい暑さ、水の冷たさ・・・そういう無機質なCGでは味わえないぬくもりが映像の中に溢れているんだよなあ。劇中に流れるノスタルジックな音楽と共に。
「さんぽ」の音楽と共にメイたちの行進が始まるオープニング。
劇中のメイたちはオープニングから歩いて走って叫んで飛びまくる。
メイと小さなトトロたちの追いかけっこ、惚れた女に傘を黙って渡し去っていく男気、夜空に傘で舞う巨躯、母のために泣き叫びそれに応えるトトロと猫バスの爆走振り。
のどかな田舎に引っ越してきたサツキたち、サツキたちを案内する清太との出会い。清太はこの時、既にサツキに恋に似た感情を抱いていたのだろうか。
普通ボロ家だと苦い顔をする人もいるだろうけど、サツキたちは「これから自分達の家にするんだー」とワクワクした表情で家の探検にでる。大声は威嚇、恐怖を薄れさせるための自分への鼓舞。
ボロボロの柱も、二人にとっては自分達を迎えてくれる遊び相手になってしまう。
まっくろくろすけは群れをなしてサツキたちに住処を“譲って”行く。
だって「出ないと目玉をほじくるぞー♪」なんて言われたら逃げたくもなるわww
手足の“すすわたり”は子供にも大人にも「夢だけど、夢じゃない」。
雨の中バスを待つシーンはちょっとホラー。
眠りそうになるメイをおぶり、サツキは独りきりで父を待つ。そんな時にいきなり巨大な爪を持った怪物が横に現れるのだ。その怪物が数分の傘のお礼に雨を「どしんっ」と止めてくれたりサツキを助けてくれるのだから素敵じゃないですか。傘を開く瞬間にビクッとなるトトロが可愛い。
“めい”目掛けて電線や田園を風のように駆け抜ける猫バスの疾走感!愛情のこもった「ばか」の一言、直接母親に会う“楽しみ”を待つ事にするサツキとメイの成長もちょっぴり描かれる・・・夏にもう一度“不思議な出会い”をしたくなる映画です。