2.《ネタバレ》 これは怖い映画です。でもその怖さは表面的な映像の怖さではない。残虐シーンはむしろたいしたことない。内面からゾオーッと人間の闇を見せられたような怖さ。表層的なストーリーは民衆の期待を集めた政治家が権力を増していくたびに独裁的になりやがて巻き込まれた人間が破滅へというよくあるパターン。スケールはぜんぜん違うが、オールザキングスメンみたいなもの(違いすぎるか)。でもこれは、舞台がアフリカであり、巻き込まれたのが白人、しかもスコットランド人ということで一気に話に深みがでている。イングランドとスコットランドの関係はブレイブハートで見たくらいの薄っぺらな知識しかないが相当な根深いものなのだろう。スコットランド人のニコラスがアミンに惹かれていくのは彼がただ単純なお調子者だからというわけではないと思う。それでいて自分は白人であるという微妙な立場。イギリスへの反発とアフリカの深い闇への恐怖、ニコラスは決して悪人ではないが、バランスがやがて保てなくなり素行がひどくなるのもしかたのないことかもしれない。途中までの能天気な明るさが中盤以降アフリカの音楽と踊りの映像とともに次第に狂気を帯びていく過程は見ごたえ十分。鑑賞中はちょっと酔ったような感覚にとらわれた。そして見終わった後に思ったのは、イギリスというのはつくづく業の深い国だな、と。