2.原作をなぞったファンの方は、どれだけ忠実に映像世界に落としてくれるかと興味深かったかと思いますが、私はとても見事だったと思います。「アリス」実写に最も適しているのはティム・バートンだと昔から思っていましたが、実際相性抜群で、なにより原作に敬意を表し、愛情たっぷりに演出しているのがグイグイ伝わってきました。
しゃべるウサギ、消えるネコ、トランプの兵隊などなど、まさに不思議だらけの世界ですが、観ているうちに映像そのものに違和感がなくなり、気付けばその世界にすっかり入り込んでいます。それは映像の美しさ、展開のスムーズさ、出演者の演技等、ファンタジーとして必要なすべての要素が織り込まれていたからだと思います。物語も起承転結あって素晴らしく、ユーモアも見せつつ、恐怖の部分も抑えつつ、監督らしいなと思いました。
アリスを演じたミア・ワシコウスカの嫌味のない美しさ、ヘレナ・ボナム・カーター演じたヒール役の赤の女王、対照的に清楚な女王を演じたアン・ハサウェイの白の女王、なによりティム・バートンの世界では一段とイキイキ見える、帽子屋を演じたジョニー・デップの奇妙な魅力!その他全ての出演者が活きていましたし、まさにアリスの入りこんだ不思議な世界を体現できる至福の2時間でした。ダニー・エルフマンの重厚なサントラもエンド時のテーマソングもまたいいです。
希望にあふれ、天使のような世界を夢見たかと思えば、自分の心のどこかにいる恐怖心が、うまく説明できない悪夢を見せたり…。その双方がうまくあわさって現実ではないのに現実のような面白い世界を作り出しています。
本当は満点つけたい所ですが、3Dで観たものの「アバター」ほど立体的描写に感動がなかったことや、深田恭子さんの声がちょっと違和感あったので-1点。でも期待通りの素晴らしい作品でした。綺麗事だけのファンタジー映画とは違う面白さがあります。
原作をお読みの方であればお分かりなのですが、これは「ワンダーランド」ですからね、あくまでも「夢・希望に溢れた天国のような世界」の話ではないし、劇的にメルヘンなおとぎ話ではない。そこを勘違いしないで見れば本当に美しい作品だと思います。確かに子供向けかもしれませんが、それを大人になっても純粋に楽しめる自分でいられて良かったです。