2.《ネタバレ》 "臭いの視覚化"。
これが上流と下流の分断を象徴する。
いくら賢くて努力をして、金持ち一家に取り入ったとしても、永遠に彼らとの距離が縮まることがない。
身なりを整えても洗い落せない臭いが、存在しない"地下の住人"が加わって浮上し、寄生一家の計画は破綻していく。
地上と半地下、そして中盤からの地下を含め、3つの家族が3つの階層で構成されるが、
高台の家族からしたら、下の存在には無関心も同然。
悪意はないにしろ、レトルトのジャージャー麺でさえ作らせるくせに
高台から下へ流れていくスラムの大雨被害なんてどうでも良いのだ。
災害も被災者もいなかったことにされるパーティーで貶められた者たちによるサイコホラーさながらの惨劇。
計画を成功させるには役に徹し切るしかないが、生きていくことで手一杯な寄生一家の父親には、
理想だったはずの世界における妬みに思考が耐えられなかったのだろう。
自ら地下に堕ちた彼を、息子は救い出す計画を立てる。
希望であり、明るい未来として挑む正攻法ではどう足掻いても打ち砕かれる余裕のなさと諦観が雪と共に埋もれていく。
こうならないためにさらに高い壁を築いてAIでも雇って排除するのか。
もはや自分達が良ければそれでいい、見返りのない面倒臭いことをする意味の無さが、
無意識に蔓延していく恐怖をポン・ジュノは警告する。
【6/12追記】モノクロ版鑑賞。
白黒の鮮明なコントラストで、持つ者と持たざる者の格差を際立たせ、醒めない悪夢をより強調させていた。
色彩による情報が排され物語への没入感が深くなり、カラー版に比べてスッキリ見易くなった印象。
なのに色が見えてくるのだから不思議。
同じ映画なのに、別の映画を見ているような貴重な体験だった。