1.《ネタバレ》 こんなに肩肘張らないポール・トーマス・アンダーソン監督ははじめて! 舞台も同じなので空気感は『ブギーナイツ』や『マグノリア』の頃を思い出しますが、もっと力が抜けていて多幸感にあふれていて、ずっとこの世界に浸っていたくなる。なにより素晴らしいのは、クーパー・ホフマン君!名優を父に持ち、父との名コンビで知られたPTA監督作でデビューでいきなりの主役。なのにこの自然体演技は一体何者か。ティーンなのに背伸びして何でもやりたいゲイリー君その人なのではないかと思えるのびのび感。事業家気取りの一方で、おっぱい見たい触りたいあたりのバカさの加減も素晴らしい。一方のアラナさんは先が見えない20代女性の迷いをこれも名演。カラフルな衣装とセットも素晴らしいけど、単にホワイト・サバービアへのノスタルジーだけでなく、何気なくセクハラするカメラマン、日本人妻にわざわざ訛った英語で話すレストランのオーナー、そしてどうにも人の気持ちがわかっていない政治家など、白人男性のイヤな思い上がりを(そしてゲイリー君がその予備軍になりそうなことも)きっちり描いているあたりも好印象。あと、自然体の主演2人のまわりで、ゲスト出演の大物スターたちがやりたい放題やってるのも楽しい。とくに、ショーン・ペンとブラッドリー・クーパーのキレっぷりは本当に楽しそうでした。何よりもリラックスしてても物語の骨組みはしっかりしていて、背伸びする10代と迷う20代が反発したり、対抗したり、でも共感したり、思い合ったりしながら、バディのような関係性のもとで、郊外の田舎町で少しずつ前に進んでいこうとするさまが、本当に愛しく、大好きな一作になりました。