10.《ネタバレ》 登場人物が個性的で、キャラや台詞が生き生きとしている。
プライドが高くて我がままばかり言う落ち目のベテラン大女優。
頭が空っぽで演技もど素人なくせにスターを夢見るマフィアの情婦。
情婦のご機嫌を取るため無理難題を突きつけるマフィアのボス。
スポンサーであるマフィアのボスに何も言えないプロデューサー。
そんな連中に芝居をめちゃくちゃにされていく脚本兼演出家の姿がおかしくて哀れ。
ずっと芝居を見せられてきたギャングの監視役チーチが、思わぬ名案を提案する展開は実に愉快。
そこにプライドを傷つけられてへそを曲げる主人公も、可哀想な被害者という面だけでなく弱点を持った人間として描かれている。
才能もチーチに劣り、出演者と男と女の関係になってしまう。
主人公よりもチーチが完璧な作品を求めていくようになるのが面白い。
どっちがプロの作家なんだかわからなくなる。
自分の作品のためには人も殺すほど鬼になれるなんて、究極のアーティストともいえる。
一方、主人公はアーティストよりも平凡な人間たることを選んだ。
それぞれみんな人間味があって血が通っているので、ドラマが躍動的に映る。
もったいなかったのはラストで、ちょっと安直なハーピーエンド。
三谷幸喜がこの作品を好きだというのもわかる。
『ラジオの時間』は明らかに本作にインスパイアされている。
予定調和気味にまとまった三谷作品より、角があって予測のつかない面白さ。
ウッディ・アレンの作品の中では、クセもなくて一番楽しめる。