8.《ネタバレ》 日頃から札付きのチンピラみたいな顔の三船がヤクザの「松永」を好演。
デビュー作「銀嶺の果て」から既に雄の匂いがプンプンしていたが、この映画でそれが爆発。
演技は駆け出しホヤホヤのチグハグで、何を言ってるか訳わかめ。
字幕があっても声が聞き取れねえ。
ただこの男が醸し出すオーラ!
戦争の暗さを背負い、それに負けない笑顔と怒りに満ちた三船敏郎は演技を超えた凄みを感じる。
地のオーラと動きで魅せる。
マキノ雅弘の「抱擁」でスマートなヤクザを演じていたのとは対照的だ。
オマケに仲間のヤクザに裏切られようともまだ仁義があると頑なに信じる松永。何度裏切られようとも。
酔いどれの医者に気遣われた恩を忘れずに庇い、「こんな腐った泥の中にも、一輪の蓮の花が残ってるはずだ」と信じ続ける。泥の中に咲く蓮の花を・・・。
こんなヤクザに同情すんなって方が無理だよチクショウ。
最後までヤクザを貫く山本礼三郎の存在も圧倒的。機銃のようにギターを抱えていやがる。
千石規子と久我美子は最高の癒し。
「静かなる決闘」の千石規子も良かったぜ。久我美子の初々しさが「白痴」であそこまで変貌しようとは思わなんだ。
壮絶な決着の後に、静かな感動をもたらしてくれる。
ペンキ塗れの壮絶な散り様は「野良犬」のクライマックスで“色”がつくラストにも繋がっている。