11.バイオレンスシーンが無かっただけで『平凡な作品』だと決めつけてしまうのは凄い感性ですね。これを見て長尺過ぎるとか言っている人はさぞかし「ロード・オブ・ザ・リング」では苦戦したでしょう。
この作品は、一昔前の「フォクシーブラウン」「コフィー」「ホワイトママ・ブラックママ」といったパム・グリアの往年の作品のオマージュです。
「ラム・パンチ」という原作があるのですが、タランティーノ流に脚本を大きくアレンジしているようですね。最近のハリウッド映画は『原作に忠実すぎる台本』の作品が蔓延しています。そんな台本は面白味が無いし、脚本家としての妙味に欠けます。そのような作品に比べてこの作品の脚本は、基本線を崩さない程度に大胆かつ巧妙に工夫が成されている。大胆と言えば、主なところでは原作の主人公を白人から黒人に変更しています。原作者が怒ってしまいそうなことですが・・・(原作者は納得しているようです)。おそらくタラは大好きなパム・グリアをどうしても使いたかったのでしょうね。年齢的なものやキャラクター的なことを考えると大正解と思いますよ。演技もとやかく言うほど悪くはない。
明らかに狙ってB級の味を出そうとしているのですが、センスの良い選曲や工夫されたカメラワーク、緊張感漂う演出により、B級には無いA級の臭いが上手く溶け合っている。
タランティーノの作品は好き嫌いがハッキリと別れます。人間の裏側(汚くて怖い部分・不条理な部分)を見せつけられて「グロテスク!」「暴力的!」などと逆ギレして見てしまうような人には向きません。悲しいかなそういう面も持ち合わせてしまっているのが人間なのです。