12.《ネタバレ》 実在した女優エリザベート・ベルクナーをモデルにリアルなブロード・ウェイの舞台裏、女優たちの熾烈な女の戦いを淡々と描く。
「アクションや時代劇好きには退屈」という評判を聞いていたのだが、そんな事はない、上々の作品だった。
確かに冒頭こそ説明ばかりで退屈になるかと思ったが、イヴの巧妙な手口にドキリとして一気に引き込まれてしまう。
イヴの過去、心を許していく映画関係者、着々と親密になるイヴ・・・だがそれは総てイヴの「仮面」だった。
徐々に本心を表していくイヴ、イヴの様子に疑念と嫉妬を燃やすマーゴ、板挟みになる作家の妻カレン、イヴに思うまま操られるロイドやマックスといった作家たち、新聞記者を通して行われるメディアリテラシー・・・彼女たちは劇中で映画の登場人物だとか、スクリーンや劇場で何かを演じる姿を見せない。
何故なら既に「イヴ」という手の中でそれぞれの役を演じているからだ。
セリフが多いのも「イヴの総て」が舞台劇だという証であり、その中で嘘の電話をして不気味な笑みを浮かべるイヴの姿、イヴの部屋に突然横たわる「来訪者」を我々にだけ見せる映画的な演出がギラギラ光り面白い。
とにかくベティ・デイヴィスとアン・バクスターの騙し合いのようなやり取りが面白くて飽きない。
それに利用される者筈の者が実は利用者だった事が判明する新聞記者ドゥイットの存在。
コイツが一番の食わせ物だった。
一番の弱みを握っていたのはこの男であり、イヴをさらに巨大な掌で転がす事に成功したのはドゥイットなのだ。
何だジョージ・サンダースよ、ヒッチコック映画の時より有能じゃないか(多分褒めてる)。
それとマリリン・モンローが普通に別嬪でワロタ(当たり前だけど)。
個人的にモンローは主役をやっている時よりも脇で原石としてキラキラ光っている時のほうが可愛いと思っていたりするのです。
ラストの「新しいイヴ」が誕生する瞬間・・・怖い映画だ。
ちなみに本作のリメイク「ショーガール」は色んな意味で凄まじい事になっています(ゴールデンラズベリー賞6部門制覇)。