1.竹下昌男さん、監督デビュー作。キネ旬の評論家レビューはあまり芳しくなかったので、はたしてどうかなーと思いながら見たのですが、いやいや素晴らしかったです。佐藤正午の原作はもうそれは相当におもしろい作品なので、この素材を新人監督、といっても助監督を長い間経験されていますが、どう料理するのかワクワクしながら見ました。カメラ的には、かなりがワンシーン・ワンカットで撮られいます。ロングショットの人物構図がほれぼれするぐらい画に収まっていますし、身体的な動きや心的な動きに対応するハンディやクロースアップもちゃんと意味がありますね。原作とは人物設定などを少しスリム化していますが、それも2時間というバランスを考えるとすっきりしてよかったのではないでしょうか。笛木優子と原田泰造の抑制された雰囲気も二人の距離感の微妙さを実にいい湯加減で表現しています。雨上がりのプラットフォームにたたずむ笛木優子の姿には、感動すら覚えました。伊武雅刀が話す靴の話も、作品を貫くリンゴにシンクロして実に効果的。次作も安心して作品を見ることができる監督だと感じておるところであります。