118.《ネタバレ》 「テキサスの五人の仲間」が最高のどんでん返しならば、「スティング」は最高の計画通り。
騙される愉しみではなく、騙していく愉しみがスティングの魅力だ。
ユーモアたっぷりの犯罪映画。
ロイ・ヒルは「明日に向って撃て!」の方が好きだが、「スティング」もまた大いに楽しませてくれる傑作!
脚本の完成度で言えば「テキサスの五人の仲間」の方が上だが、純粋な満腹度で言えばやはり後年の「スティング」を俺は選ぶ。今回再見してみて一番印象が変わったのは、ポール・ニューマンの相棒を務めたアイリーン・ブレナンもとびきりの美人てほどじゃないけど場数を踏んだ女傑という雰囲気を前回見た時よりも強く感じた。キャサリン・ロスとはまた違った魅力を再発見できたのが嬉しい。
冒頭の見事な「詐欺」、一瞬のすり替え、ドライな殺し合い・・・動きで魅せる事にこだわったロイ・ヒルの粋な演出。
物語は1930年代のシカゴを舞台に、詐欺や賭博で生活を立てるフッカーの波乱に富んだ生活と復讐の物語。
各章ごとに区切る事でより盛り上がるストーリー展開、初っ端から金を騙しとるフッカーたち、その瞬間から全てのからくりが動き出す伏線のオンパレード。
賭博師・警官・マフィアの三つ巴、殺し屋、詐欺師、ボディーガードの三連装!
警官に殴られてもタダでは金をやらないフッカー。
警官・マフィアとの三つ巴の逃走劇は命のやり取りを楽しんでいるようにしか見えない。正に生きるか死ぬかの大博打。
フッカーを追うスナイダーの執着ぶり。
ここまで来ると「ルパン三世」に出てくる銭形警部のような愛着が湧いてくる。ある意味一番幸せな男だ。
ゴンドーフの詐欺師振りも凄い。相手がヤクザだろうが何だろうが度胸一番、酒は飲んでも飲まれずキッチリ大仕事。古女房ビリーとのコンビが面白い。
さあ今回最大の被害者となるドネガン。いやいやコイツは受けて当然の仕打ちよ。
命を取られた人間が一番の犠牲者なんだから。
なーに財布の50万$やら100万$なんざ軽い軽い(精神的に廃人になるだろうけど)。
ラストの締めも最高のエンディングだった。
「やっぱりそうなったか!待ってました、予想通りの最高の終わり方!」
本作は「騙される」のを期待して見る映画じゃない。 主人公たちがいかに仇を「騙して」金を巻き上げるかを見守る作品なのよ。主人公と仇の温度差をな。
そんな最高の映画です。