1.《ネタバレ》 本来はこの第八作で完結予定だった次郎長。
完結を予定していただけに、畳み掛けもシリーズ一番の迫力を感じさせる。
石松が主役といっても良い。
次郎長一家のやり取りも益々和気藹々として面白おかしく、「旅がらす次郎長一家」で仲間を失った痛みからようやく吹っ切れた感も出ている。
先に旅立った豚松も、生まれ変わって槍を振り回して(「七人の侍」に出演して)いる事だろう。
諸事情で途中退場してしまった仲間たちのエピソードもキチンと織り込み、ストーリーはより厚みを増してくる。
どうでもいいけど、加藤大介は出れないで何で志村喬が出て来れんだよ(笑)
志村さん「七人の侍」で一番重要なお人じゃないか。
戦前から「弥次喜多道中記」や「鴛鴦歌合戦」でマキノ一家と馴染みが深い人だし、シリーズで一番盛り上がっている時に出るのは自然な流れなのだろう。短時間とはいえ、大親分としての存在をしっかり印象付けて去っていった。流石だ。
中盤の政五郎と石松の戦いは必見だ。
半裸になりじゃれる様に刃を交える斬り合いは熱く、その途中で「俺にはお藤さんがいるから死ねんのよ~」とのろけてみせる政五郎のノロケにガクッと呆れる石松が面白い。が、何処かギクシャクする。
普通戦闘時の女の話は死亡フラグである。
ギム・ギンガナムで言えば「戦場でな、恋人や女房の名前を呼ぶ時というのはな、瀕死の兵隊が甘ったれて言う台詞なんだよ!」と思いながら石松も戦っていたに違いない(何じゃそりゃ)。
だが、政五郎には生きる理由が存在する。
石松はどうだ、戦って死ぬ事に活路を見出そうとしているのではないか。
政五郎に触発されたか石松、夕顔への想いを募らせる。
だがそこは石松。忠義は次郎長に、惚れた女には義理立てだけして去っていく。切ない。
この後に再び登場する志村喬の演技が素晴らしい。
そして再び刃を交える政五郎と石松。
「俺も惚れた女が出来たから死ねん」とノロケ返しだ。
夢のような幻想的な光景が展開される。
石松の直球を受ける気ゼロのお園は本当魅力的。
しかし、“戦馬鹿”じゃなくなった石松は・・・石松よ永遠に。
この作品でパワーを使い果たしたか、第九部はラストに相応しくない急ぎ足の作品となってしまったのが惜しい。