1.《ネタバレ》 ニューヨークの高層マンションでセレブな生活を送る雑誌記者ジャネット。金融マンの婚約者とともに何不自由なく暮らしていた彼女はある日、街の片隅でゴミを漁るホームレスの夫婦を目撃する。眉を顰め、すぐに立ち去るジャネット。だが、そんな年老いたホームレスの姿は、幼かったころの悲惨な思い出を彼女に蘇らせるのだった。何故なら、そのホームレスこそジャネットの実の両親だったから――。酒浸りでロクに働かない父親と夢見がちで生活能力が皆無に等しい自称画家の母親。彼らとともに借金取りから逃れ全米各地を転々とするかつての日々。ほとんど学校にも行かせてもらえず、ろくに食べるものもない悲惨な状況で、ジャネットは幼い姉弟たちとぎりぎりの生活を強いられていたのだった。成長とともにこんなどん底生活から抜け出そうともがくジャネットだったが、親子という絆は彼女を簡単には開放してくれない…。親としての責任を放棄した両親の元、過酷な生活を余儀なくされた子供たちのどん底の日々を実話を基に描いたヒューマン・ドラマ。そんな典型的な毒親を演じるのはウディ・ハレルソン&ナオミ・ワッツと言う個性派コンビなのですが、まあとにかくこの両親、これまで色んなダメ親の映画を観てきましたが、その中でもトップクラスの最低夫婦でしたね。無計画に4人も子供を作りながら、ろくに働かず飢えた子供たちをほったらかして一日4箱の煙草と2リットルの酒と言う自らの欲望にだけは忠実な父親。金にもならない絵ばかり描いて幼い子供たちに家事を強要させた挙句、小さな女の子に大やけどを負わす母親。もう徹底的に反吐が出そうになるほど最低の両親なのですが、それでもときおり見せる子供たちへの愛情が本物なのがまた厄介。行政が出てきて強制的に保護されるぎりぎり手前のラインなので、ある意味、こいつらが一番最低な両親とも言えます。そんな彼らの姿が、成長し今や成功した次女ジャネットの目線で描かれるのですが、その愛憎相半ばする葛藤が凄くリアルなんです。最低で悲惨なことばかりだったけど、それでも楽しかった思い出もたくさんあった。そう、まるでガラスの城のように――。「死んだら誰も悪うに言わんからはよう死ね!」。これは無頼派漫画家、西原理恵子が作品中でよく親に使っていた言葉なのですが、それと通じる屈折した想いがここにはある。どんなに最低でも親は親、死と時間がいつか解決してくれる。深い諦めにも似た、そんな境地で最後、家族とともに過去の思い出を楽しそうに語るジャネットの姿に思わず涙してしまいました。この監督の作品は初めて観ましたが、この貧困の現実を冷徹に見つめるスタンスは素直に素晴らしい。かなり重たい作品でありますが、親と子の関係に悩む多くの人に是非観てもらいたい優れた良作でありました。