1.《ネタバレ》 (もろネタバレです)「ドキュメンタリー」というジャンルに分類されているこの映画ですが実際の所は真実と虚像のごちゃ混ぜになった内容で今村昌平の弟子である原一男の映画「ゆきゆきて、神軍」「全身小説家」の先駆けという内容でしょう。映画が進むにつれ「真実を映し出す鏡たるドキュメンタリー」といったお決まりのパターンにはまる事などまったく無く、男の存在なぞはついぞ出てこない。なぜゆえに失踪したのかも提示されない。この男と婚約者、その姉との三角関係が現れて観客はそこに原因があったのか、とかんぐりたくもなるがそれも単なる推測、勝手な想像として流しているだけであって実際はわからない。そもそも失踪した男の存在すら虚構で、これは「実録」という名を借りたフィクションなのではないかとも思う。でも私はこの映画を高校生の時に見て、物の見方、特にメディアというフィルターを通して映し出されたニュース映像は100%それが真実を示しているわけではなく、第三者(撮影者とか、編集とか監督など)の視点から見た事実にしか過ぎないのかなという啓蒙を与えてくれたという意味で大いに良い映画だった。ただこれは(今でもお昼のワイドショー、巷のゴシップ紙なんか典型的だが)記事になっている・写されている人間の思いをまったく無視し、視聴者に判断をゆだねるという無責任な行為であって不快になる人も出てくるだろう。そういった意味では賛否両論、問題になりやすい映画でしょう。