3.《ネタバレ》 寅さん鑑賞2作目です。
何よりもまず、大原麗子が美しい。
ほんとうに美しい。上品で色っぽい。なのに可愛くていじらしい。
「寅さん、あたし泣きそう。。二階に行ってもいい?」
「あたし、寅さん好きよっ!」
「はいっ!寅さんに出会えたこと!」
「見ないでっ!」
もう反則ですよ(;´Д`)ハァハァ
あの独特の低い甘ったるい声と表情でこんなことを言われたら、女でも落ちますって。
なのに、離婚届を出す場面になった時の打って変わった冷たい表情。まなざし。声のトーンの機微。
さすが女優だなぁと思いました。
まだ寅さんシリーズを見始めたばかりなので何とも言えないけれど、これはほぼ大原麗子が主役といっても過言ではない気がします。
割烹着を脱ぐ仕草ひとつにさえ目を奪われてしまうのは、彼女の魅力を丁寧に撮った監督の愛さえ感じました。
大原麗子にばかり言及してしまいましたが、作品としてもとても素晴らしい。
私は個人的に、今回は寅さんは失恋していないと思っています。
早苗さんは、絶対に寅さんに惹かれていたはずです。これは女の勘です。
もしかすると、一時の気の迷いなのかもしれない。
けれど、少なくとも彼女は、はじめ兄さんよりは寅さんに男性として惹かれていた気がします。
はじめ兄さんの一途さを目の当たりにして寅さんは身を引いたのかもしれないけれど、そこには今昔物語からの教訓もあったように思いました。
寅さんは、早苗さんの美しさのすべてを彼の中に残す選択をしたのだ、と。
彼女と時を共にすることは、その残酷さ、無情さも受け入れることを意味する。
だから彼は去ったのでしょう。
妻の墓を掘り起こしたがゆえに、もう二度と美しかった妻の顔を思い出せない夫と同じ轍を踏まないために。。。
ある種の「逃げ」かもしれないけれど、寅さんらしい愛の形や優しさでもあるなぁ…と、胸が熱くなりました。
しかしながら、寅さんの王道とも言えるドタバタ感は相変わらず健在で、何とも言えぬ安心感を与えてくれます。
特にタコ社長!(笑)
彼が出てきた時は、思わず「よっ!待ってました!」と声をかけたくなるワクワク感やニヤニヤが止まりません。
寅さんの良いところって、たぶん「こんな人たちに囲まれて人生を送ってみたいな」と思える点なんだなぁと、今回鑑賞していて思いました。
出てくる人たちが、みんないい人。
ただのいい人じゃない。
みんなそれぞれに思いやりがあって、お互いを思い合っている。
その表現方法やポイントが、それぞれに違うだけ。
だから良いんですよね。
人間臭くて、あたたかくて、いじらしくて、とてもホッとする。
寅さん鑑賞2作目としては、この作品で良かったと心から思いました。
鑑賞後、またすぐ見直したくなったほど、この作品はとても魅力があると思いました。
同時に「今はもう寅さんも早苗さんもこの世にいないのだ」と考えると、今昔物語と同じだなと思ってしまいました。
過去の名作を掘り起こしてその姿を渇望する私たちもまた、エゴに満ちているのかもしれません。
皮肉ですね。儚いです。
それでも、私はまたこの作品を見たい気持ちを否定できません。