2.《ネタバレ》 左幸子が波打ち際に突っ伏し、波をかぶりながら悶えるように嗚咽するショットに激情が迸る。
それは、ラストで砂浜に突っ伏して動かない丹波哲郎のショットとも対になる。
時折入るキャメラを傾けた不安定な構図も、様々な証言に翻弄される彼女の心情とシンクロして効果的だ。
現在パートをカラー、戦中パートをモノクロで分けているが、飯盒に入った肉塊の肌色や米兵処刑シーンの土色、
小隊長殺害シーンの血の赤色など、過去パートにもインパクトのある色彩が不意に飛び込んできて生々しい。
「天皇陛下--」。銃殺の瞬間に(「抗議のよう」に)絶叫する丹波は何を訴えたかったのか。
『大日本帝国』(1982)での篠田三郎の台詞「天皇陛下、お先に参ります。」は脚本家:笠原和夫の巧妙な「逆手」(昭和の劇)だが、
こちらも少々生硬ではあるが新藤・深作・長田なりの痛烈な「一種の高等手段」だろう。
随所でストップモーションをアクセントとするこの映画。ラストは正面を見据える左幸子の表情である。