3.《ネタバレ》 実在の茶坊主、河内山宗春を扱った時代劇。
実在の宗春の死はハッキリしない部分も多く、逆に言えばそのミステリアスな最期が後年の多様な脚色を生んだのだろう。
「丹下左膳」や「人情紙風船」に比べると余り演出の冴えを感じられない。
それでも無関係だった河内山と用心棒が徐々に関係を深めていく様子や、丁寧な掘り下げ、一触即発な抜刀の場面、数分ながらラストの殺陣など流石の演出だ。
でも雪を背にしたカットはちょっと懲りすぎな気が・・・と思ったら、雪夜を背に哀しげな表情を見せる原節子の美しさは何ともいえない。
それに、本作の最大の見所はやはり人間ドラマだろう。
油断できないキャラの河内山、ユニークな用心棒の先生、河内山を気遣う女房代わりの女性、「丹下左膳 百萬両の壺」に出ていた例のコンビも忘れがたい。この作品のキーパーソンだ。
加藤清正は違うだろうけど。
それに超初々しかった節子。
喧嘩が止まるほどカワイイ節子。かわゆいっす。こんな初々しかったのか・・・。
クライマックスとなる路地裏での斬り合いは見づらい部分もあるが、閉所における息詰まる攻防が見所。
ストーリーは「人情紙風船」ほど暗い部分も覗かせたが、ラストの希望を抱かせる走りっ振り。
姉の愛情に気づいた弟は、光の中に向って走り続けるだろう。