3.《ネタバレ》 確かに溝口らしくない部分もあったけど、女が好き勝手やって自滅するという図式は溝口作品屈指の出来だと思うんだ。
ネオンが光る夜、朝には光が消えて静まり返るファースト・シーン、家族の食卓で始まるところ。漬物をポリポリ噛む音を楽しめるのはトーキーだからこそできるね。
時折ギラリと輝く父ちゃんのメガネで吹くわ。
ヒロインの綾子が夜遊びに進む過程。
良い歳した中年おやじが若い娘の胸元に名刺を差し込む辺り・・・溝口はこういうのが本当上手い。
ガラス越しの電信での会話、綾子の手紙の文字、戸をガラッ開けて“男”を見せつける場面と。
クローズアップも結構多く、要所要所の挿入は印象に残る。
山田五十鈴が若くてキレイだなー。
暗闇で家に入る人影、妹さんそんなところに「ぬうっ」といたらホラーだよ(演出が完全に怪談じみてた)。
遊び好きの活発な女性が男二人引っ掛けて、どちらとも「おまえはそんな女だったのか!」と失望されて家に帰ったら「そなアホな女家族や無い!出て行けや」と勘当。
あんなに笑った溝口映画は初めてだ。兄貴、妹の素っ気ない返事のワンツー・パンチがまたツボ。この殺伐とした空気が最高だぜ。オマケにあれだけ高慢なヒロインも流石に落ち込むだろ・・・と思ったらまったくヘコたれてない(爆)もう何なんだよこの女wwwwwwww「不良少女」どころじゃないよもう。
山田五十鈴の演技が最高すぎる。
梅村蓉子夫人とのやり取りも最高だった。人形浄瑠璃の劇場に不倫相手の男と一緒。
そこに嗅ぎつけた奥さんがズンズン乗り込んできて「何してんやアンタ!」と問い詰める。奥さんの剣幕に逃げ出す男どもがまた面白い。
そして地味に志村喬が出ていたり。この頃から刑事やってたんだなー志村さん。後ろ姿だけでもカッコ良いのは何故だ。
またラストシーンが良いねー。
例の名刺を川面に向って投げ捨てる。暗闇ながら水面の美しいこと。
過去との決別だね、ハッキリした女だ。
それで通りかかった男に「あたい“不良”ちゅうビョーキなんや。ねえ“お医者さん”、どないしたら治るやろか?」と聞く場面。
ただの通りがかりの男を医者と呼ぶこのセリフの面白さ、解ったもん勝ちだね。
「祇園の姉妹」は丁寧だったけど、パンチが足りなかった。この作品は少々荒いけど、パンチが効いてるからコッチの方が好み。