1.《ネタバレ》 大金を強奪した5人の男女が仲間割れというありふれたプロットなのに、不思議なほど引き込まれる魅力を持った作品です。キャスティングだけでこの映画の評価の8割は決まったとも言えます。山崎勉は『天国と地獄』の竹内銀次郎からさらに人間的感情を削ぎ落してもっと冷酷にした様なはまりキャラです。西村晃がこういう役をするのは別に珍しくはないけど、きっちり期待以上の演技を見せてくれます。一味の中に加藤大介を入れるというのがまた絶妙で、彼としては珍しい犯罪者役ですがやっぱこの人は上手いわ。そしてあの東宝きってのお嬢様女優である団令子が崩れた悪女だというのが驚きです。こういう役は、彼女のフィルモグラフィ中でも唯一ではないでしょうか。 不動産屋の中にほぼ画面が限定される後半は、二階と地下に昇り降りする階段を意識した画面造りには拘りを感じさせます。でもあの水筒のシークエンスはちょっと不自然で、だいいちあんな水筒、お店で売ってないでしょう(苦笑)。それまで山崎勉があまりに怜悧だったから、このシーンにももっと裏があるんじゃないかと勘ぐってしまって拍子抜けしちゃいました。でもこの映画の持つ独特の雰囲気はフレンチ・ノワールを東宝映画調に昇華させることに成功しており、まさに隠れた傑作と呼んで過言は無いでしょう。