1.大学の頃、研究室の先輩達とカラオケに行くと、尊敬すべき先輩達は決まってこの“上を向いて歩こう”を下ネタオンパレードの替え歌で熱唱し、その時歌詞の背景にはこの映画のシーンが流れていて、ああ、下ネタの嵐の中、九ちゃんの笑顔の眩しかったことよ。というのも今では懐かしい思い出ですが。さてこの映画。タイトルだけ見れば、いかにもヒット曲にあやかったような、企画モノっぽい胡散臭さを感じちゃうのですが、内容は決してそんな軽いものではなく、意外に暗い内容。演出にも気合いが入っていて、なかなかの力作になっています。冒頭のタイトルの背景の鑑別所のシーン、流れるようなラグビーのパス、食事中に次々に手渡されるヤスリ、そして集団脱走、ここでは人から人への流れ、人と人との繋がりが象徴されているにも関わらず、映画の中で展開されるのはひたすら、すれ違いや誤解、すなわち分断。あくまで“コメディタッチの青春物語”という体裁なので、そうヒドイことにはなりませんが(笑)一歩間違えば凄惨な展開になってもおかしくないところ。物語において、この分断を修復する役目なのが、吉永小百合をはじめとする、女性たちの存在。彼女たちのおかげで、一応、サワヤカな青春モノ、に踏みとどまっています。エンディングは、みんなで主題歌を歌ってサワヤカにお別れ。このサワヤカさ、本当に額面通り受け取っていいんでしょうね? まさか、殺戮の末に全員死亡したということの暗喩じゃないでしょうね(笑)。まあ何にせよ、意外に力作です。