1.《ネタバレ》 山田洋次監督が「東京家族」のメインキャスト全員を再び起用して手掛けた映画で、再び家族を描いているが、こちらは「家族はつらいよ」というタイトルが示す通りの喜劇映画。かなり前からもう山田監督は喜劇映画はやらないのかなと思っていたので再び喜劇映画を作ってくれたことがまず嬉しい。もう冒頭のオレオレ詐欺の電話と間違えられるシーンから爆笑の連続で、見ていてまったく退屈しないし飽きない。妻・富子(吉行和子)から誕生日プレゼントに離婚届に判がほしいと言われたときの夫・修造(橋爪功)の表情も笑えるが、富子の浮気を疑って長女夫婦(中嶋朋子、林家正蔵)が用意した探偵(小林捻待)の初登場シーンの描写が完全に寅さんのような描写なのがまた良くてすごく笑えるし、修造の愚痴を言っているときに本人が現れる間の悪さや、両親の離婚についてみんなで話し合っているときにそれを知らない次男(妻夫木聡)が家に恋人(蒼井優)を連れて来るという間の悪さ、家族会議の最中にちょっとしたことでケンカになるのもまるで「男はつらいよ」シリーズのとらやでのやりとりを見ているようなおかしさがあり、思わず懐かしい気分になった。最初に書いたように家族役は「東京家族」のメインキャストが演じているが、「東京家族」と違って団結した家族なのが対照的。でも、本作のほうが山田監督らしい家族の描き方に感じられる。そんな家族が繰り広げる寅さん的な世界を見ていて、山田監督の「男はつらいよ」シリーズへの思い入れの深さや、また寅さんのような明るい喜劇映画を作りたいという気持ちが伝わってくるし、きっと山田監督は肩の力を抜いて楽しんで本作を演出していたんだろうなあというのが想像できる。見ているこちらとしても山田監督の映画を見て久々に心の底から笑うことができたし、同じキャストでも「東京家族」よりこちらのほうが好きだ。そして、どんなにシリアスな映画で評価される監督であってもやはり山田監督は寅さんシリーズの監督であり、喜劇映画の監督だということを改めて感じることができたのも嬉しい。ここ10年ほどの山田監督の映画の中では文句なしにいちばん面白く、本当に楽しい映画だった。