63.《ネタバレ》 「ザ・ロック」なんて火薬の無駄遣いなギャグ映画がニコラス・ケイジの最高傑作ななワケがない。
この「フェイス/オフ」こそケイジの最高傑作。
ジョン・ウーにとっても香港時代の最高峰が「男たちの挽歌」なら、アメリカ以降の最高はダントツでコレ。
スローモーションはスローモーションでも、ジョン・ウーはサム・ペキンパー譲りの血が滾り汗の匂いがプンプンするスローだ。
爽快感と疾走感に富んだバトルを、愛憎入り交じった人間ドラマが力強く支える。
映像で魅せるだけでも、語りだけでも面白い。
故郷中国の武侠精神、アメリカに上陸したての野心が詰まっている。
冒頭からエンジン全開爆走のアクションの数々。
弾を飛ばせ、人を飛ばせ、飛行機をぶっ飛ばせ、考える暇を与えないアクションを魅せる魅せる魅せる。
冒頭27分だけでも独立した作品に出来るくらい。
そこからもっと面白くなるのだ。
この映画の「顔」づくしのスリル、サスペンス、アクションをもっと楽しめる。
冒頭説明不足だった登場人物たちの背景を補完、文字通り「肉付け」をキチンとしていく。
そしてジョン・トラボルタとニコラス・ケイジ最高の怪演!
二人の狂気の染まり方の違いも見所。
自作自演、嘘を本物にしてしまう映画の素晴らしさと恐ろしさをふんだんに楽しめるぜ。
敵も味方も人間味に溢れていて憎める奴が少ない。
なのでサスペンスとしてのスリルは減るが、その分アクション要素をフルに楽しめる。
キャスター・トロイの悪を貫いた姿勢も良かった。憎しみよりも愛情を掴みかける場面。
多くの人間の命を奪ってきた者の苦しみが出る。
しかしトロイも男だ。
人殺しには人殺しのケジメを果たした生き様。
最期の最期まで純粋な「悪」を通したからこそトロイは強かった。
ショーン・アーチャーも悪に逸れかける葛藤があっていいね。
しかしショーンには何者よりも強い家族愛を持っていた。それがショーンに正義の心を持たせ続ける。
悪に生きたトロイ、愛のために戦ったショーン。
白と黒の単純明快な美しさ。
ちなみに主役格二人の役はアーノルド・シュワルツェネッガーとシルベスター・スタローンの予定だったらしい。
なにその脳筋コンビすげえ見てえ(二人の共演は「エスケープ・プラン」「エクスペンダブルズ」とかを見てくれ)。