2.《ネタバレ》 高峰秀子演じる林芙美子は、嫌な女だ。ブスだけど妙にたくましくずる賢い。自分を慕ってくれるまじめな男など目にくれず、ハンサムだが中身の乏しい男に身も心も捧げてしまう。金のためなら変顔など厭わず奇妙な踊りもこなし、ライバルを蹴落とすためなら汚い手段をしても何食わぬ顔だ。成人したばかりの自分が見たら、一発で嫌いになるタイプである。でも何故だろう、人生半分に差し掛かった今はこんな嫌な女が妙に愛おしく見えてしまう。多くの人間が持っている嫌な部分を正直に表し、貧乏で泥臭く生きる姿についつい共感してしまうのだろうか。この女の逞しさは、羨ましいぐらいだ。「このままじゃ終わらないよ」と言ってるシーンは、両目がメラメラと燃えているようだった。「二十四の瞳」で天女のような大石先生を演じた高峰秀子が、この映画を気に入っていたのは彼女の優れたエッセーを読むと何となくだが、わかるような気がする。やっぱり高峰秀子は、凄い女優だわ。