2.《ネタバレ》 徹夜明けの夜に鑑賞したにも関わらず、全く眠くなりませんでした。序盤の演出?(バスケ、エキストラのセリフ、テレビ報道等)で「こりゃダメだ…」と思ったのも束の間、終わってみれば「映画版」デスノートとしての面白さを十分に発揮できた傑作という感想に至りました。漫画を忠実に再現しても、こんなに面白くはならなかったでしょう。漫画はジャンプで毎週楽しみにして読んでいましたが、漫画より面白かったです。
良かった点は、捜査本部に入る動機をしっかり作れたこと。そしてLのお菓子好きを単なるキャラとしてだけではなく、ラストでLの凄さをアピールする道具として利用させたこと。ポテトチップスを食べながら登場する場面は、お菓子好きを伏線として使った映画ならではの名シーンです。後編は間違いなく最高に面白いと思える作品になるのだろうと確信できた前編でした。
こういう漫画原作映画やアニメ映画は、そもそもとんでもないフィクション設定が根底にあるわけですから、作り手にとってもリアリティーとフィクションの境界線の引き方がすごく難しいと思います。ストーリーの流れと漫画的な盛り上げ方、人間離れしたキャラクターなどをどう折り合いをつけて「実写」という現実に不自然でないように映し出すか。なのでこういった映画を楽しむためには鑑賞能力も非常に大切です。漫然と見ていればいくらでもツッコミ所が出てきてしまうもので、そうなると例えば私は序盤の演出やレイとナオミの会話シーンで「うーん…」と不自然さを感じてしまうわけです。これは作者の境界線と自分の境界線が重ならなかったということで、映画が悪いのではなく鑑賞者である自分が悪いのです。境界線の位置は人それぞれ違うので、全員を満足させる線引きは不可能です。ゆえに鑑賞者が線を合わせていかないと、偶然制作者と気が合ったという場合にしか楽しめないことになります。世の中漫然と見ても楽しめる寅さんみたいな映画ばかりではないと考えます。それを踏まえると、このデスノート前編が絶妙な境界線を引けていることがわかります。
ただ一カ所だけどうしても気になるのが、ポテチの袋の中の小型テレビをあっさりとゴミ箱に捨てるシーンがなかったこと。あればもっと面白いというだけのシーンだと思うので、カットした理由が気になりました。