2.《ネタバレ》 原作の西村賢太さんは私小説作家です。だから本作の内容は彼のウィキペディアの人生の内容ほとんど重なっています。
私は西村さんに比べて年齢は若いですが、同じような青春時代を送っていました。
私の場合、口だけは役者を目指すと言いつつ、バイトに明け暮れる毎日。
恋愛経験も映画の主人公と同じように不器用でした。
何が面白いのかわからないと思う人も沢山いるでしょう。
原作が芥川賞を受賞した時、村上龍さんは「人生は不条理というテーマは陳腐」と言ったそうですが、若くして人生を成功させた人には、この映画の意味はわからないと思います。
映画の時代設定はバブル全盛期か、その前あたりかと思うのですが、美味しい想いをしたのは弁当のレベルだけです。
「夢」という言葉が沢山出てきましたが、歌手の夢を捨てたオヤジが足の指を切り捨てられ、酔いつぶれたあげく、主人公に「夢は作家です」と言われた途端、カラオケのマイクを横取りし、「襟裳岬」を上手に歌うシーンには心が打たれました。人生は上手くいく人といかない人がいるんだということを改めて痛切に感じました。
役者陣がよかったですね。前田敦子ちゃんはキスシーンや下着姿で海にも入れるんですね。
私はAKBには興味はありませんが、応援したくなりました。
話は西村さんに戻りますが、以前、石原慎太郎さんの番組にゲストで呼ばれたとき、サスペンスとか書いたら?とアドバイスされ「自分は私小説しか書けないのでフィクションは無理なんです」と言ってました。
これから先、何を書こうにも西村さんは素晴らしい作家でいることを祈ります。
話は映画に戻りますが、内容は自堕落な青年が本気で物書きに(なろうと…)たどり着くまでの道のりを描いたロードムーヴィーのように感じました。だからタイトルに「列車」がついたのでしょう。ロードムーヴィーは面白いんです。