8.《ネタバレ》 JGバラードのかなり難解な自叙伝的作品をうまくスピルバーグの映画として作り上げている。(ハロウィーンパーティのシーンにJGバラード本人が写っている。)
スピルバーグの飛行機に対する愛情、思い入れが主人公ジムの目を通してひしひしと感じられる。
イギリスを知らない上海生まれのイギリス人少年が太平洋戦争の勃発で日本軍の捕虜となって蘇州の収容所で終戦までをすごす。 一人の無垢な少年が受けた過酷な体験を少年の目線で叙情的に描いている。 非日常である収容所生活が楽しく感じられたり、大好きな飛行機に触れた時の幻想的なシーンも当の少年の気持ちで見たとすれば十分納得できる。
上海のシーンは実際に上海でロケされたが撮影年を考えるとこれはすごいことだ。 でも逆に当時だから出来たのかも知れない、今は開放が進んで気軽に訪れることは出来るが町並みがすっかり変ってしまって映画の撮影が出来るような状況ではない。
何年も両親とはなれてきわめて異常な状況の中で暮らしたために両親の顔を思い出せなくなるジェイミー。 後半のその告白のシーンは心に強く響く。
そしてラスト、戦争が終わって収容所からでたジェイミーを探しに来た両親との再会。 ジェイミーは心に傷を負って感情の無い顔でボーっとしている。 父親は目の前を通るがお互い気がつかない。 しかし母親がジェイミーを見つけ近づく。
だがジェイミーは反応しない。 が、ついに母親の唇に触れ覚えていた口紅を確認、さらに髪の毛の色を確認。 ようやく母親を認識したジェイミーは母親に手を差し伸べ抱きあう。
ジェイミーのうつろな瞳は母に抱かれようやく安息を得られた安堵に変っていく。 大変に感動的な演出だった。
大好きな作品のひとつ、でも満点にしないのは日本、日本軍の考証がなっていないから。 白装束の兵士(?)がわらわら登場したり、海軍と陸軍がごっちゃになっていたり。