2.《ネタバレ》 この作品は、私が「タイタンの戦い」をロードショー公開で見た2年後に、某名画座で見ました。率直に思ったのは「タイタンの戦い」が大作を意識しすぎてか、英国演劇調の台詞回しなど、演出がやや硬くて重い印象だったのに対し、この作品は冒頭から良い意味で無邪気な冒険活劇を目指しているんだな!ということでした。魔法を使うたびに老いてしまう(特に船首像を動かしたときが顕著)悪役クーラのキャラクターも、コマ撮りに伴うハリーハウゼン氏自身の疲労感から生まれたアイディアではないか?と想像したりもしました。また、音楽担当のミクロス・ローザ氏は、ベン・ハー(1959年)の音楽も担当したことがあり、そのガレー船の場面で流れるBGMと、悪役クーラのテーマ曲が似ているのも個人的には面白く感じました。さらに、小学校低学年の頃、興福寺の阿修羅像の写真を見て「これを特撮で見られたらな…」と思っていた願いを、カーリー像が見事に叶えてくれました!。そのカーリーを、ぐうたらなハロウンが倒すという展開にも「ストーリーを工夫しているな」と思いました。何故なら、アルゴ探検隊の大冒険(1963年)を見たとき、活躍しそうな登場人物が前半であっけなく亡くなってしまい「ハリーハウゼン映画では、人間のキャラクターは、なおざりなのだろうか…」と寂しく思っていたからです。
このように色々と感心しただけに、ケンタウルスにさらわれたヒロインの救出劇をもっとスリリングにしたり、クーラの忠実な部下・アクメッドのその後をきちんと描くなど、クライマックスに向けた詰めに、もうひと押しがほしかったな…という物足りなさが残りました。なお、以前に発売・レンタルしていたビデオ収録版に比べ、DVD版は映像・音質共に鮮明ですね。上記の物足りなさを差し引いて採点は9点を献上しますが、これからも鮮明なまま、多くの人に愛されてほしい作品です。