6.オープニングで多少、というかかなり不安になったがそれも杞憂だった。実在のコメディアンの伝記映画で、作品中では彼のプライベートよりも、彼の芸やステージのシーンの方が多いにもかかわらず、一番笑えたのは彼が癌を患ってそれを告白したのに、家族にさえ信用されないというエピソードなのは実に皮肉だ。国民性の違いか、あるいは単なる趣味の問題だろうか?しかし感動作としてはあまり笑えない方がいいのかもしれない。アメリカのエンターテイメントの中でも日本人には特に馴染みの薄い、お笑いの世界の一端を覗けるのは興味深い。彼の過激な芸の根底にあるのは、ただ単に人々を驚かせたい、楽しませたいという純粋な思いだったのだ。その純粋さゆえに、周囲の人々から見ると、彼は暴走し、芸は過激になり、観客は付いていくことができなくなった。この辺りエンターテイナーや芸術家が根源的に抱えるジレンマかもしれない。しかしエンターテイナーとして最後まで自身の芸に殉じる姿は立派である。過激さの中にも人々や世界に対する大きな愛情みたいなものが見え隠れしていて感動させられる。それにしてもジム・キャリーは上手い。