1.《ネタバレ》 数多あるフェデリコ・フェリーニ作品群の中から、『崖』を鑑賞。
フェリーニ作品は全て観たが、この『崖』が一番のお気に入りだ。
世間では、同時期に作られた『道』(1954)の方が有名である。
でも私は『崖』の方が遥かに好きである。
一番のお気に入りシーンは、「主人公と小児麻痺の少女との会話」シーン。
詐欺を働き、その人生自体も汚れきった中年の主人公。
片や、小児麻痺と戦いながらも人生と真正面から向き合い、純粋さを失っていない少女。
この対照的な二人の会話は、ただただ見入ってしまうほど感動的で印象的なシーンだ。
主人公が、純粋な少年や少女と会話をするシーンは、『甘い生活』(1959)や『青春群像』(1953)などの初期フェリーニ作品でもよく出てくる。
『甘い生活』は非常に尺の長い作品で、ややもすると退屈さに襲われる危険性大の作品だが、ラストの「海辺での主人公と少女との会話(実際は会話が成立していないが)」シーンが一気にそのもやもやを吹き飛ばしてしまう。
『青春群像』でも、ラスト間際の「汽車が出発する直前の、主人公と少年の会話」シーンがあり、最後にとてつもない余韻を残す。
私にとって、初期フェリーニ作品が大好きな理由は、まさにこれらの名シーンが存在するからなのだ。
中期から晩年にかけてのフェリーニ作品は、まさに「映像の魔術師」的作品が多く、それらは高く評価されているかと思うが、私の好みには合わない。
やはり私にとってのフェリーニ作品といえば、『甘い生活』であり『青春群像』であり、そしてこの『崖』であるのだ。
“あの会話シーン”を観たいが為の理由で、私はこれらの作品をまたいつの日か観ることだろう。
最後になってしまったが、ニーノ・ロータの音楽も言わずもがな素晴らしい。
やはりフェリーニはロータあってのフェリーニである。