1.《ネタバレ》 極端な程に賛否両論で評価が二分されている「エブエブ」に次ぎ、2023年のアカデミー賞を席巻した本作。
夜23時過ぎに軽い気持ちで観る映画では有りませんでした。
正に実際の戦場とはこの様な場所なのだろうと思わせる、リアルに徹した描写の連続。
敵味方を問わずそれぞれに人生が有り、愛する家族が待っているであろう兵士一人一人の存在はまさしく「虫けら」同然。
最初は希望に燃え明るい表情だった主人公は加速度的に硬く無表情になって行く。
私は兵士達が戦車に踏み潰され、火炎放射器の餌食になる余りにも凄惨な描写に途中で観るのを止めようとさえ思いましたが、
本作制作陣の思いを汲んで頑張って最後まで見届けました。
余りにも理不尽な終戦間際の無意味極まりない出撃、そして停戦時間を過ぎた途端にまるで何事も無かったかの様に
塹壕で行き違う兵士達。
いったいあの多大な犠牲は何だったのかと戦争と言う不条理に居てもたってもいられなくなり、この思い・怒りを一体どこにぶつければ良いのかと、私は深夜に独り呆然としておりました。
とどめは最後の説明、僅か数Kmの陣地を奪い合う為に数万の兵士達が戦死したとの事。
一体何なんでしょうか?これって。
余りにも、余りにも酷過ぎます。
今のご時勢、どうしても本作の様な作品を観た後は以下の内容に気持ちが傾きがちになりますが、敢えて書きましょう。
こんな不条理で愚かな馬鹿げた事が、今もウクライナの地で繰り返されている。
私が一人深夜に映画を観ているこの瞬間も、こうして感想をしたためている正にこの瞬間も、
ウクライナの地では大勢の人たちが偽政者達の愚か極まりない行為の犠牲になっている。
例え本作がロシアが戦争を仕掛ける前に製作されていたとしても、本作は私が抱いた様な思いを世界中の出来るだけ多くの人達にも持って貰おうと言う思いが絶対に有った筈。
そう考えると、今年のアカデミー作品賞はエブエブでは無く本作に獲得させるべきだったのかもと思ってしまう。
アカデミーは本作に長編外国語映画賞、「ナワリヌイ」に長編ドキュメンタリー賞を獲得させる事で戦争と独裁権力に反対する意思表示は果たしたのかも知れないけれど、果たしてそれだけで本当に良かったのだろうかとずっと考えています。
一分一秒でも早く、ウクライナに平和を。
戦場にいる兵士一人一人が、無事の帰宅を待つ家族の元に帰る事が出来ます様に。
そして最後に、プーチンに神の鉄槌を。(もっと厳しい表現にしようと思ったが、この程度にしておきます)