2.《ネタバレ》 当人にとっては事実の証言であってもカメラが入っていることを認識している以上、話すことには必ず演技の要素が入ってしまう。そしてこの映画には到底演技とは見えない自然なものから極端にわざとらしいもの、更に単なる素人の棒読みまで、色んなレベルの演技がごたまぜになっている。ヒロインとレポーターの露口が不自然な演技者の代表格。ドキュメンタリーの取材者と被取材者でありながら監督の命を受けて異様な恋愛ごっこを演じてみせる。謎なのがヒロインの姉。その話しっぷりはどうみても自然で嘘をついているように見えない。しかし彼女の証言が虚偽であることを匂わせる証言者が複数出てきて、ラストはそのうちの一人と姉が対決するという構成になっている。この証言者というのがまた思い込み系の人に見えてどうも信用できない。そして姉に証言の内容を否定されることでその思い込みがますます深くなっていくように見える。観客にはどこに真相があるのか・どういうつもりの作品なのか全くわからなくて腑に落ちない気分が最後まで続く。途中何度かイタコの口寄せが挟まるが、イタコはどんなに真に迫って見えてもその発言は嘘にきまっている。正真正銘の嘘つきという点に於いて、他のどちらともつかない出演者よりむしろ信頼できる。イタコがこの混乱した映画の中ではほっとするような息抜き的存在になっているのだ!…ラストの対決の舞台が浅草橋の路地というのは私のような昭和マニアには堪らない。いかにもATG的な実験作品なのに、やってることが下世話なワイドショーなので決して気取ったお芸術風にならず最後までバカっぽいテイストで実にすがすがしい。唐突に解散になるラストはまるでモンティパイソンのホーリーグレイルだ。