3.晩夏の深夜。ふいに観たくなった“ジブリ作品”の中でもマイナーの筆頭とも言えるこの映画を、DVDで観る。
観る季節としては、とてもいいタイミングだと思う。
“マイナー”と言っても、この作品でさえ鑑賞回数の延べ数は2、3回では留まらないだろう。
だが、「良い映画」というものは、観るほどに深みが増すものだ。
そして、この作品の場合、歳を重ねたり、環境が変わるほどにその風合は大きく変わってくると思う。
詰まるところ、これまでの印象以上に素晴らしく良い映画だと思った。
27歳を迎える都会育ちのOLの心象を、小学5年生時の自分の「思い出」と共に描き出す。
時間の壁を懐古感と情感たっぷりに行き来するその描き方が、非常に巧みだ。
昔の自分を顧みるだけでなく、その心情を軸として現在と自分自身と向き合っていく様が、この映画をただの「昔懐かし映画」に留まらせていない。
小学5年生の自分、東京でOL暮らしをする自分、田舎生活を満喫する自分、様々な「自分」を見つめながら、新たな「自分」を見出していく。
この映画を初めて観たのは小学生の頃だが、その時はこの映画の持つテーマの意味合いなんて分かるはずもなかった。結果、“なんだか地味なアニメ映画”という印象が根強く残る。
でも、まあそれは仕方がない。
ある程度、観る者自身が歳を重ねないと、この映画が“物語るもの”に感情は反応しないだろう。
と、いうことを25歳になる年の夏に気づいた。
歳を重ね、思い出はあるときぽろぽろと降り落ち、自らの足元に積もっていく。
そういうものなのだと思う。