14.《ネタバレ》 この映画の凄い所は話の筋自体は大したアクションもどんでん返しも無く
淡々と進んで行くにも関わらず、逆に緊縛感は映画が進めば進むほど増大し
まったく観客を飽きさせない事です。
シーゲル特有の癖の有るアングルから舐める様に撮られた独房
味気ないコンクリートの壁、冷酷な看守、そして1癖も2癖も有る登場人物。。。
彼等は凶悪な犯罪者では有りますが、ある者は二十日鼠を愛し
自分の食べ物を分け与えて育てていたり また有る者は絵を愛し、描いた自画像に実際には有るはずの無い菊を描いて自分の自由を表現します。
主人公のモリスは聞きます「菊は何処に有るんだ?」
絵描きと呼ばれる囚人は言います。「それは心の中だ。彼等(看守)も私の心の中までは縛る事は出来ない」と。
ともかくこの映画は立場はどうあれ、人間はいつどんな時も自分の持っている自由が
奪われれば奪われるほど、逆に自由を追い求めると言う哲学が根本に敷かれていて
それが全編重厚なイメージと共に観客を引き付けながら
いやが上にも増して行く緊迫感をあえてギュウギュウと押さえ付けながら
クライマックスでは一転、一気呵成に駆け上がって行く。
警報が鳴り響く中、床にコロリと転がったモリスの首人形を見て笑った黒人が
事の全てを凝縮し
痛快にこの作品を表しています。