1.《ネタバレ》 劇場公開時に観に行ったのですが、観返してみて、やっぱり佳い作品だなと。冒頭、状況把握が出来ないままぼんやりした映像で進み、徐々に事態が飲み込めてくると映像がハッキリしてくる。主人公と呼応した映し方も然ることながら、海を思わせる水色や緑を配した病院の描写にも、感じるものがありました。そして何といっても、自分を受け入れた時のジャンの、記憶と想像力の羽ばたく描写が素晴らしい!彼の物語が進むと同時に、彼の頭の海に誘われるようです。それと同時に映されるジャンの今の姿との対比により、より一層、死や絶望と対して、もしくは対になって、生命力の無限さと美しさを感じさせられました。病人を描いた作品でありながら、全くジメジメしていないのは、そういった描写力や表現力の素晴らしさはもちろん、ジャン本人の人間的な魅力、特にシニカルなユーモアも描かれているからでしょう。ただやっぱり、父親との電話の場面は涙が出ましたが。奥さんがいる前での愛人の電話は残酷だったけど、ズルいとこも非常に人間的だなあと思った次第です。