5.《ネタバレ》 ああこいつのレビューは大変かも…でもオイラ的には避けて通れないしなあ…。
いま名づけましたが「Uボート映画の原理」とでも言うべきモノがありますな。
1.潜水艦には頭脳派の名艦長が搭乗している。
2.いろいろあって駆逐艦に目をつけられる。
3.駆逐艦の艦長は猟犬なみにタフな野生派か頭脳派。
4.潜水艦1隻を沈めるために爆雷を出血大サービスするが、初手は爆発深度を予測されて失敗。
5.丁丁発止の駆け引きをするうちに潜水艦側が手詰まりになって、
6.耐圧深度ギリギリまで潜って難を逃れる一発勝負に出たり、
7.音をひそめて死んだフリしたりして、
8.一発必中の機会を待つ…。
この「駆逐艦」の部分を「軍事アナリスト」に変えたりすると、もうちょっと幅が広がりますね(苦笑)。さて、このうち8割くらいは、この映画で生まれた定石と言っていいんじゃないでしょうか。これは潜水艦映画が、他の多くの戦争映画とはジャンルのレベルから違うという事です。上記ルールを半分以上守ってる映画は、(沈むか、逃げ回って逃げ回って運がよければ一発逆転という展開しかない)潜水艦側に圧倒的に不利です。もう観客が、潜水艦の艦長に感情移入しないワケがない。これ、戦争というよりスポ根ドラマの枠組みなんですよね。本作以外にも『深く静かに潜行せよ』『レッドオクトーバーを追え』『U-571』…例の日韓2作は見てませんが…。
ところがこの原理に従わない潜水艦映画がふたつありまして、『Uボート』と『クリムゾン・タイド』ですな。潜水艦を舞台に「戦争」を描こうという勘違いをしたせいで(って言っても『Uボート』は潜水艦ファンへのメッセージでもあり確信犯でしょうけど)「別にミサイル基地の中でも塹壕の中でも撮れるやん」って感じの映画になっちゃってます。その他の例外はSF映画。『海底2万リーグ』『渚にて』『ミクロの決死圏』『復活の日』『アビス』…まあここでの潜水艦は戦闘目的ではなく冒険装置・人類生存装置みたいな役割ですから。敵はタコさんだしね。
というワケで「潜水艦映画」の規範を作り、ストーリーを戦争の本質から上手に切り離し、潜水艦という卑怯な弱者をヒーローに仕立て上げちゃった本作の功績は限りなく大きいのです。ただ本作には原作がありまして、原作ではもっと濃い駆け引き(『U-571』で使われる死んだフリ作戦もある)が展開されてます。ご参考までに。